2018.10.20

エンタープライズiOS用語集

エンタープライズiOSには独特のキーワードが沢山あります。これは、端末購入・設定・アプリ配信・ライセンス・運用など、考慮することが多数あることを意味しているとも言えます。

以下にエンタープライズiOSで関係ありそうな用語を一覧にしてみました。各キーワードの詳細解説は別エントリに譲ります(今後拡張)が、エンタープライズiOSに関係する方は一通り知っておくと良いと思います。

(最終更新 : 2018/10/27)
 

準備

ADEP
Apple Developer Enterprise Program の略。Apple Developer Program の一つ。社内専用アプリを開発して配布するために必要。この契約で個人向けアプリ配布はできない(AppStore申請不可)。企業用途での自由度の高い配布が可能な分、規約で利用形態は厳しく制限されている。契約は年更新で¥34,800。ちなみに、円高の時期には¥29,800だったこともあった。
DUNS
ADEPやVPPの契約・登録をするために必要な企業番号。DUNSナンバー、DUNS番号と呼ぶこともある。法人登記されている企業であれば世界で一意の番号が割り当てられている。日本国内では東京商工リサーチに問い合わせして調べることになる。自社のDUNS番号取得をする場合は費用はかからない。有償のプレミアサービスに申し込むとDUNSナンバーが記されたA4サイズの証明書やCD-Rが届く。
iDEP
iOS Developer Enterprise Program の略。ADEPの旧称。企業向けDeveloper Programは当初iOSアプリのみを扱う仕組みだったが、macOS向けアプリの仕組みの統合やtvOS・watchOSの登場にあわせて、Apple製品のOS全般をカバーする仕組みとして統合。ADEPと改称された。今はiDEPという言葉はApple的には存在しないが、今もこの言葉を使う人もいる。

 

署名

秘密鍵ファイル
iOSアプリには必ず署名が行われている。署名に必要なのが秘密鍵。拡張子 .p12 のファイルで認識されることが多いが、.p12ファイルには秘密鍵に加え証明書も含まれている。開発会社が万が一顧客企業の秘密鍵ファイルを預かる場合は、不用意に複製をせず厳重に保管する必要がある。InHouseアプリの場合この管理が杜撰だとアプリを使った業務が突然停止する事故発生につながる可能性がある。
プロビジョンファイル
アプリに関連する情報が含まれたファイル。誰によって作られたアプリなのか、どのデバイスで起動できるのか、期限はいつまでか、などの情報が含まれる。拡張子は .mobileprovision。バイナリデータとXMLが混在するファイルなので、テキストエディタ等であるていど読むことが可能。

 

アプリ配布

inHouse
ADEP契約で可能になるビルド形態。独自に開発した業務用途アプリをリリースして社内配布する際に使用する。ビルドされたアプリのことをinHouseアプリと呼び、台数無制限に配布できるという特徴をもつ。ただしADEPの契約主体である法人が雇用・業務委託する者のiOSデバイスのみを対象としており、不特定多数のユーザにInHouseアプリを配布することは固く禁止されている。違反するとADEP契約を破棄される可能性もある。
AdHoc
開発中アプリの途中で顧客や関係者に実機動作確認して貰うためのビルド形態。AdHocビルドされたアプリは、あらかじめ指定したデバイスでしか起動できない。デバイスはUDIDで識別し、プロビジョン作成の際にUDIDを紐付ける。
OTA
On The Air の略。ネットワーク経由でInHouseアプリやAdHocアプリをインストーする技術のこと。特定のルールに従ったXMLファイル(.plist)とアプリの実態(.ipa)をセットにしてWebサーバに配備してアプリを配布する。XcodeやiTunes, AppleConfigurator2を使ったUSB接続インストールに比べて非常に楽。
CustomB2B
AppStoreに存在するアプリを自社専用にカスタマイズして貰って自社内でのみ配布できる仕組み。AppStoreに存在する既存アプリのdeveloperに協力して貰って自社専用AppStoreに登録して貰うような仕組み。VPPと組み合わせて使用する。企業向けとして専用のカスタマイズをする割には、AppStoreでの一般消費者向けアプリと手間・手順が変わらないため余り使われない。

 

端末の購入や初期設定

キッティング
法人向けのまとまった台数のiOS端末に共通また個別の初期設定を行う作業のこと。AppleIDの取得・各種設定・アプリインストール・アプリ内の設定のほか、デバイスへのカバー装着や管理番号テプラの貼り付けなどアナログな作業を含めた総称。キッティングを専門とする事業会社もあるが、情報システム部門に雑務として押し付けられることが多い。昨今は、DEPやMDMを使ってほぼ自動初期設定が可能になっており、キッティング作業の手間は昔ほど大きくない。
DEP
Device Enrollment Program の略。ADEPやiDEPと表記が似ているが意味は全く異なる。法人向けに用意されたiOS端末アクティベーションの方法。新規購入のiOS端末の電源をONにするだけで、アクティベーションのみならず、設定からアプリのインストールまで自動で行える仕組み。MDMと連携する。電源ONのみで初期設定が全て完了するため、昨今の法人導入で使用されることが増えてきた。
DEP端末
DEPが発動するように設定された特別な端末のこと。従来はAppleまたはApple指定のリセラーから購入するしかDEP端末を手に入れる方法はなかったが、現在は特定条件の端末であればAppleConfigurator2を使って後からDEP端末化できる
VAR
Value Added Reseller の略。Apple以外からDEP端末を購入する場合に申し出る先となる企業。ダイワボウ情報システム、ソフトバンクC&SなどDEP端末を販売するだけのIT系流通商社のほか、Tooのようなインテグレーション支援までしてくれる企業などそれぞれ特徴がある。(敬称略)
プロファイル
iOSデバイスに対して行なう設定を記述したXMLファイル。XMLはplist形式で、拡張子は .mobileconfig。通常は Apple Configurator2 を使って作成するが、MDMがプロファイル作成機能を持っている場合もある。またXMLなので独自のスクリプトプログラム等で生成することも可能。
iPhone構成ユーティリティ
プロファイルの作成・流し込み、AdHocアプリのインストールなどに使用するApple純正のアプリケーション。Windows/Macの両方が存在した。現在は macOS 用の AppleConfigurator2 に役割が取って代わられ開発は停止中。

 

端末管理・アプリ管理

MDM
Mobile Device Management の略。モバイル端末に遠隔で命令を送ったり情報を収集するためのプロトコル。エンタープライズiOSの世界でMDMと言う場合、プロトコルではなく、プロトコルを実装したサービスのことを指すことが多い。国産MDMではBizMobile、CLOMO MDM、海外MDMではJamf,MobileIron,AirWatchなどがある。Appleも macOS 用の macOS Server アプリで、プロファイルマネージャという簡易MDMサーバ機能を提供している。
Managed App Configuration
MDMからアプリ固有の設定値を配布することのできる技術。エンタープライズiOSの分野で最も知られていない機能の一つ。
VPP
Volume Purchase Program の略。企業がAppStoreに存在するアプリを使用する場合に使用する。AppStoreアプリのライセンス管理機能に相当し、有償アプリの大量購入やライセンスの割当・剥奪などの機能も備える。MDMと連携することが前提。
VPP Credit
VPPでAppStoreの有償アプリを購入する時に使用できるクーポン。VPPの標準決済手段はクレジットカードだが、VPP利用企業が請求書ベースの支払いを希望する場合に使用する。クーポンはVARより購入する。
Apple Business Manager
VPPとDEPが2018年6月に統合されたサービス。Apple School Manager に似せて企業向けの統合管理サービスとして2018年に正式ローンチした。使用するには別途取得する専用のAppleIDを使用することが推奨される。2段階認証の設定がされたAppleIDでなければならない。
Apple School Manager
教育機関で使用するAppleのサービス。生徒と教職員を管理する他、端末管理、アプリやコンテンツの配布が可能。また共有iPadという1台のiPadを複数の生徒に使わせることができる機能を備えるのも特徴。(本サイトは企業向けを専門としているのでASMには言及しない)
Apple Configurator2
macOS専用のiOS端末管理アプリケーション。MacにUSB接続された端末へのアプリインストールや設定、各種情報の取得、復元、バックアップ、SingleAppModeの設定などあらゆるiOS端末管理系オペレーションが可能。
cfgutil
Apple Configurator2 の機能をターミナルから使用できるコマンド。Apple Configurato2 上からインストールする。shell script 等で使用することにより、大量のiOS端末に対して一度に定形の処理を行なうことができる。

 

デバイス制御

Single App Mode
iOS6から搭載されたiOSの機能。iOS端末を指定したアプリのみ起動した状態にできる。Apple Configurator2 または MDM から設定する。同じくiOS6から標準で搭載されているアクセスガイドとは異なる。より厳密な専用端末化が必要な場合に使用する。
Guided Access (アクセスガイド)
iOS6から搭載されたペアレンタルコントロール用の機能。親が子にiOSデバイスを使わせる際、HOME画面に移動できない状態で渡すために用意された。Single App Mode は MDM や Apple Configurator2 による制御が必要なのに対して、アクセスガイドは簡単なパスワードで単一アプリ表示状態の入/切が切り替えられるため企業で使用されることもある。MDMやプロファイルでは設定できない。
Per App VPN
アプリケーションごとに接続するVPN設定を切り替える機能。特定のアプリのみVPN装置を介して社内ネットワークに接続する等の用途に使用する

 

認定や業界団体

ACN
Apple Consulting Network の略。Apple製品のエンタープライズ向け導入・運用を支援することができるとAppleから公式に認められた企業郡。各社特徴がありエンタープライズiOSの導入・運用支援に特化している企業もある。当社(フィードテイラー)はそのうちの1社。
iOSコンソーシアム
正式名称は一般社団法人iOSコンソーシアム。iOSをビジネスに活用促進するために設立された社団法人。定期的にセミナー等を開催している。林信行氏が顧問に就任している。

 

2018.10.13

社内用独自アプリ(in-house)を開発しようと思ったら最初に考えるべきこと

iPhoneやiPadに使い慣れてくると業務に使う自社専用アプリを開発したくなることがままあります。あるいは、一念発起してiPadを全社導入するのを機会に専用アプリを作りたくなる場合もあります。

アプリに限らず何かと自社システムを欲するのは日本企業の性(サガ)なのでしょう。

ですが、

自社の業務用アプリ開発はお勧めしません

これは、10年間、B2Bも含めアプリビジネスをやってきた経験から全力で強調したい点です。自社アプリ開発は、他に選択肢が無い場合に限って初めて考えるべき選択肢です。余り吟味することなく自社専用アプリ開発を考えているようであればその考えは早々に捨てて下さい。

本エントリではその理由を解説すると共に、業務アプリにどう向き合うべきかのガイドラインを示します。

かつて業務用OSはバージョンを固定できた

アプリは開発したら終わりと捉えられがちです。

が、多くの業務システムがそうであるように、業務用アプリもまた「完成してからがスタート」です。要件定義や仕様策定、実装やテスト等など、アプリの初期開発フェーズはプロローグ、本編は作った後に始まります。

従来、どのOSバージョンを使うかの決定権はユーザ企業にありました。WindowsXPを前提に開発した社内の業務システムは、WindowsXPであり続けることを前提にできたのです。Windows7マシンをわざわざWindowsXPにダウングレードなんてことも見聞きしたことがある筈です。

しかし、モバイルOSではOS提供側とOS使用側の力関係が反転しました。

iOSをアップデートしないという選択肢はない

スマホやタブレットのOSはユーザ企業の意思で固定できません

iOSもしかり。iOSの支配者はAppleです。

(最新のiOS12リリースから1ヶ月で半数がアップデートされている → source)

Appleがアップデートすると言ったら追随するしかありません。半ば強制的なアップデートです。業務用のiOS端末を集中管理するMDM(Mobile Device Management)をもってしても、iOSアップデートを阻止することは残念ながらできません。(iOS12でMDMを使って猶予を設けることは可能になりました。が、それでも「猶予」に過ぎません)

iOS10の時代に作ったアプリがiOS11で使えなくなる…なんてことはよくあります。少し画面がおかしいといった軽微なことなら許容できますが、アプリの作り方が悪いと新しいiOSでは起動すらできなくなるという許容できない事故になる場合もあります。

これは、開発したアプリは常に最新OSに対応し続けていく必要があるということを意味します。しかも、最新OSがリリースされてしまう前にです。

ここで少し考えてみて下さい。Windows7→Vista→8→10と常に新しいOSの登場のたびに自社の業務システムをアップデートし続けなければならないとしたらどうでしょう?iOSのアプリを自社で開発するということは、そういうことなのです。

更新され続けるOSに都度対応していく覚悟が持てますか?

自信を持ってYESと答えられないなら、業務アプリを独自に開発してはいけません。別の手段に頼ることを強くお勧めします。

(「今すぐインストールする」を誰もクリックしないという保証はない。間違って重役の人が勝手にアップデートしてしまってアプリが動かなくなったら?)

星の数ほどある既成アプリを使うことから始める

実は、アプリを使って○○をやりたいと考える場合、○○の大半はできるアプリが既に存在します。

営業支援アプリ、フィールドワーク支援アプリ、ビデオ会議アプリ、資料共有アプリ、情報共有アプリ、MR向けアプリ、工事現場向けアプリ…等など何でもあります。

業務用アプリは2010年頃から増えはじめました。国産のものだけでも、数え切れないほど沢山あります。それを使わない手はありません。作らなくても目の前にあるのですから。

前述したOSアップデートへの追随はアプリ提供会社が責任を持ちます。ユーザ企業はiOSのアップデートに併せて、提供されるアプリをアップデートするだけで良いのです。余計な心配をする必要はありません。

  1. まず既成品アプリを活用する
  2. アプリに不足している部分があれば開発元に機能追加を要望する
  3. (開発元が対応してくれるのなら)自社向けにカスタマイズ開発を依頼する
  4. 2,3も期待できないなら他のアプリで代替できないか再検討する
  5. 自社独自のアプリを開発を検討する

これが業務アプリと向き合う段階を示したガイドライン。検討時の優先順位です。多くの場合、2までで要件は満たせます。わざわざ開発しなくても良いのです。

自社で業務用のアプリを開発したいと思ったら、まず既成品を評価することから始めましょう。勇気を持ってそのアプリに自社業務を合わせる姿勢でアプリと向き合って下さい。そのほうが、開発に時間とお金をかけてまで未来の面倒を抱え込むことに比べたら遥かに生産的です。

多くの企業にとって、自社でアプリを開発することが本業ではない筈です。

様々な業務用アプリを紹介しているサイトは多数あります。iOS端末を調達する際の調達先(携帯キャリアやリセラー)企業に、お勧めのアプリが無いか自社の要件を伝えてみて下さい。導入支援を依頼してもいいでしょう。もちろん弊社にお問い合わせ頂いても結構です。

2016.12.12

iDEPではなくADEP

企業内で独自のアプリケーションを開発して配布するのに必要なApple社との契約である iOS Developer Enterprise Program。関係者の間ではこれを「アイデップ」と発音されることが多いです。業務用のアプリ開発案件に携わったことのある方は聞いたことがあると思います

このiDEPが、2015年からADEP(Apple Developer Enterprise Program)と名称を変えていることをご存知でしょうか。

全部ひっくるめて Apple Developer Program

変わったのは、2015年6月に行われたWWDCの時期。

watchOS 向けにネイティブアプリを作れるようになって、AppleTV 上の tvOS 向けにもアプリを作れるようになった際に、それまであった Mac AppStore 向けの Program も Safari Extension 向けの Program も全部統合してしまおうということになったのです。こうして生まれたのが、Apple Developer Program

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単に統合されただけではなく、開発途中のものを指定した端末に転送できる AdHoc 配布の台数がiPhoneで上限100台、iPadで上限100台というように、カテゴリ毎の上限となって使い易くなったことも開発者界隈では大変評価されました。

これに併せて、iOS Developer Enterprise Proggram も同時期に Apple Developer Enterprise Program と名前を変えました。勿論、企業内向けに配布可能な AppleTV アプリや AppleWatch アプリも作ることができます。

20161212_2130

結果、2016年6月以降は、Developer Program は以下3種類となりました。

Developer Program の種類 対象
Apple Developer Program
(旧 iOS Developer Program)
AppStore向けのアプリ開発に
Apple Developer Enterprise Program
(旧 iOS Developer Enterprise Program)
in-houseアプリの開発に
iOS Developer University Program 大学での教育用途に

3つ目の University だけが何故か「iOS」のままなのですが、これには理由があります。

University Program は大学等の教育機関でiOSアプリを作るためだけに使える教育プログラムで、ここに MacApp や tvOS用App は含めないというのが Apple の方針だからです。その為、University についてのみ iOS のまま変わらずです。

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University Program はなかなかハードルが高く、教育機関であることの証明提示やアプリ開発カリキュラムを作る事を示す必要があります。教育機関の関係者の方は、AppleのFAQページを参照されると良いでしょう。

ADEP(エーデップ)という呼称は浸透してない

2015年6月以降はiDEPのことをADEPと呼ぶのが正しいのですが、残念ながらADEPと言っている人は聞いたことがありません。

実質、企業における専用アプリはiOS向けに限られることが多いですから、これからもきっとiDEP(アイデップ)と呼ばれ続けることでしょう。

2016.11.28

iOSアプリの署名とDeveloper Programの関係

iOSには安全性を担保する為に、各アプリが誰によって作られどのように配布されているのかを検証する仕組みが備わっています。その為、全てのiOSアプリにはデジタルの名札のようなものが紐付けられるようになっていて、それを署名(CodeSign)と言います。

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(Thanks! The photo on flickr by Sebastien Wiertz CC BY 2.0)

Developer Program は署名の為に必要

通常、署名はアプリ開発環境であるXcodeで行われます。

アプリがインストールされる時起動される時、iOSは各アプリの署名を見て、

  • 誰がこのアプリを作ったのか
  • まだ起動が許される期間かどうか
  • この端末で起動させても良いアプリかどうか

などの確認を行います。アプリに開発者名と制約条件が書かれた名札のようなものが紐付いているとイメージすると良いでしょう。

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この署名に必要なのが、証明書や秘密鍵、プロビジョニングプロファイルと呼ばれるもの。実態は拡張子が .p12 や .mobileprovision のファイルですが、これを先の例えでいうところの名札としてアプリに紐付けるのが、署名という行為です。

Apple社との開発者契約(Developer Program)は、これらアプリの署名に欠かせないファイル群を継続的に入手する為に必要となるものです。契約は毎年の更新が必要です。

Developer Program の契約をしなければ、署名に必要な証明書やプロビジョニングプロファイルを入手できません。署名ができないということは、Xcodeでアプリを開発してもiOSデバイスにインストールできないということです。「別にシミュレータ上だけで充分」という場合には Developer Program の契約は不要です。

Developer Program には以下のように3種類あります。

Developer Program の種類 対象
Apple Developer Program
(旧 iOS Developer Program)
AppStore向けのアプリ開発に
Apple Developer Enterprise Program
(旧 iOS Developer Enterprise Program)
in-houseアプリの開発に
iOS Developer University Program 大学での教育用途に

これらDeveloper Programの種類とアプリの署名は密接に関連しています。

必要な署名の種類で契約が異なる

iOSは、アプリの署名を検証する際、「誰が作ったのか」に加えて「どのような範囲で配布されるのか」を見ます。この「配布の範囲」の数だけ署名にも種類があります。配布とはインストールさせる(して貰う)ということですが、一口に配布といっても範囲は色々。

  1. 開発途中のアプリを開発者本人が自分のiPhoneにインストールする
  2. 開発中のアプリを身近な関係者に少し見てもらう為にインストールさせる
  3. AppStoreから世界の不特定多数の人に配布する
  4. 企業が自社専用のアプリを従業員に提供する

誰が作ったアプリかというのは一緒でも、どのような範囲で配布するのかでこれだけの種類があります。全部で4種類で、Developer Program の種類によって署名できるものが違ってきます。

配布形態 (a) development (b) AdHoc (c) AppStore (d) InHouse
配布範囲 開発担当者 プロジェクト関係者 全世界(または指定国) 特定企業内
誰の端末 開発者 非開発者で関係者 不特定の一般ユーザ 特定企業内のユーザ
いつ 開発中 開発中・評価中 リリース リリース
どうやって USB USB/OTA AppStore USB/OTA

Apple Developer Program で対応可能な配布形態

development, AdHoc, AppStoreの3種類の署名ができるのが Apple Developer Program です。つまり、開発者が自身のデバイスにインストールし、身内関係者や限られた顧客の為にも配布ができ、最終的にはAppStoreで公開もできる契約です。

配布形態 development AdHoc AppStore in-house
配布範囲 開発担当者 プロジェクト関係者 全世界(または指定国) 特定企業内
誰の端末 開発者 非開発者で関係者 不特定の一般ユーザ 特定企業内のユーザ
いつ 開発中 開発中・評価中 リリース リリース
どうやって USB USB/OTA AppStore USB/OTA

Apple Developer Enterprise Program で対応可能な配布形態

development, AdHoc, InHouse の3種類の署名ができるのが Apple Developer Enterprise Program です。前述の Apple Developer Program との違いは、AppStoreが選択できない代わりにInHouseの配布形態を選べることです。

配布形態 development AdHoc AppStore in-house
配布範囲 開発担当者 プロジェクト関係者 全世界(または指定国) 特定企業内
誰の端末 開発者 非開発者で関係者 不特定の一般ユーザ 特定企業内のユーザ
いつ 開発中 開発中・評価中 リリース リリース
どうやって USB USB/OTA AppStore USB/OTA

iOS Developer University Program で対応可能な配布形態

これは多くの人には馴染みがない契約ですが、大学等でiOSアプリ開発を教育目的で行う場合に必要です。development, AdHocの署名しかできません。そもそも学内教育目的であれば公開という概念が存在しませんから理にかなっていると言えます。

配布形態 development AdHoc AppStore in-house
配布範囲 開発担当者 プロジェクト関係者 全世界(または指定国) 特定企業内
誰の端末 開発者 非開発者で関係者 不特定の一般ユーザ 特定企業内のユーザ
いつ 開発中 開発中・評価中 リリース リリース
どうやって USB USB/OTA AppStore USB/OTA

このように、iOSアプリは署名によって、誰がどんな対象に配布しようとしているアプリなのか定義されるようになっています。Appleは各配布形式に対応した署名用ファイルの取得のできる/できないを契約毎に変えることによって、アプリの配布をコントロールしているのです。

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(Thanks! The photo on flickr by Jason Farrell CC BY 2.0)

業務用iOSアプリでは、配布形態を意識する

企業でiOSアプリを開発/活用する場合、そのアプリをどう提供するのか正しく意識しておく必要があります。

一口に企業が使う業務アプリと言っても、企業内はInHouseだからADEPだ…とはなりません。場合によってはAppStoreの配布が適当である場合もあります。VPPやCustomB2Bと呼ばれる手法を組み合わせるべき時もあります。

下手な運用をすると厳しいADEPの制限に抵触してしまい、InHouseの形態で配布した業務アプリがある日突如として起動しなくなる、といった最悪の事態に陥る可能性もあるのです。(実際に面識のない企業様から緊急の相談連絡を頂いたこともあります)

企業のiOSデバイス活用では、アプリをどう配布するのか常に意識しておきたいものです。できれば、業務用アプリの開発を委託する場合には、開発会社がこれら配布形態の違いを説明できるかどうかは確認されることをお勧めします。

2016.11.15

なぜ企業でiOSデバイスが選ばれるのか

2008年7月iPhoneが日本に上陸。当初は「単なるデジタルオモチャだ。流行るはずが無い」と言われるなど散々バカにされていました。しかし2010年5月のiPad日本上陸の時期からでしょうか、iOSデバイスの業務活用の気運が急速に高まり、8年以上が経った今もiOSデバイスが選ばれる傾向があります。

20161116_ios
(Thanks! the photo on flickr by ClearFrost CC BY-SA 2.0)

AndroidやWindowsも選択肢としてありますが、iOSを駆逐するには至っているとは到底言えません。なぜiOSが選ばれるのでしょうか。

弊社(フィードテイラー)では、2008年にiPhoneアプリ開発を始め、2010年からエンタープライズiOS向けサービスの開発に進めていく中で、iOSデバイスが業務活用されていく現場を目の当たりにしてきました。数々の御支援もさせて頂いてきましたが、iOSが選ばれる理由は、ただ単に格好良いとか、先進的だという感覚的なことではありません。

本質的な理由はズバリ、業務でデバイスを活用/運用し易い仕組みがOSレベルで整備されているからです。業種業態を問わず、文字通りコンピュータを1人1台持って仕事をこなす時代を支えるOSとして、

  • 万全のセキュリティ
  • 集中管理の仕組み
  • 遠隔操作や末端の情報収集の仕組み
  • 業務用アプリの開発や配布の仕掛け
  • 既存業務用インフラとの連携
  • 市販アプリの大量購入
  • 端末のキオスク化

…等々、ありとあらゆる業務用件を満たすようiOSは年々進化してきました。とかく、Consumer向け新機能ばかりが話題になるiOSですが、iOSの歴史はエンタープライズへの歩み寄りの歴史でもあるのです。

2008年来、スマートデバイスの業界に身を置く専門家として言えるのは、導入・保守・運用等々を考えるとAndroidもWindowsもiOSの足元にも及ばないということ。Androidは5.0以降、Windows は10 Mobile以降、ようやく整備されはじめてきた感がありますが、専門家視点で言えば「まだまだ…」です。

また、業務利用を意識したiOS界隈には、当然のように早くから業務活用ソリューションが多数生まれてきました。ファイル共有、ペーパレス会議、データベース、電子帳票化、SFA、POSレジ、チャット…。すぐに使える既存サービスが数多くあることも企業がiOSを選ぶ理由の一つです。

今後はどうなるか分かりません。ただひとつ言えるのは、エンタープライズのモバイル活用にはiOSに一日の長があることと相変わらずの進化の速さから、iOSは今後もエンタープライズ分野で一定の存在感を示し続けるだろうということです。

世間にはエンタープライズiOSの情報(特に技術的な情報)が少ないことを鑑み、本サイトでは業務活用に絡むiOSのトピックスについて重点的に発信していきたいと考えています。