2021.4.12

カスタムApp(CustomApp)とは何か(6) 〜審査期間と審査難易度について〜

社内専用業務アプリを開発するとなれば、2019年頃まではADEPを契約しInHouseアプリとして作ることが定石でした。その理由の一つにAppleの審査がないことがあげられます。

対して、カスタムApp(CustomApp)とは何か(2) 〜ABMとの関係と申請方法について〜で紹介した通りカスタムAppの申請ではAppleの審査があります。新たにADEPを契約するのが難しくなって、ADEP未契約企業が非公開の業務用アプリを開発するにはカスタムAppを使うほかない今、カスタムAppの審査がどのようなものか知っておくことは重要です。


(現時点でADEP未契約企業が自社専用業務用アプリを開発・配布するならカスタムAppしか選択肢がない)

本稿では、AppStore公開アプリの審査に関わった事のあるアプリ関連企業や開発者の方向けに、カスタムAppの審査について紹介します。要点を先に書くと、

  • カスタムAppの審査は公開アプリの審査と同じ
  • カスタムAppの審査はリジェクトされにくい(ように思える)

です。以下に、弊社での実例とともにご紹介します。

 

カスタムAppの審査期間は?

申請から1日〜3日と考えて問題ありません。AppStore公開アプリと感覚的には一緒です。業務用アプリなので審査に時間がかかる…とかそういうことはありません。

参考までに弊社の実例をご紹介します。以下は、ある業務アプリの初期バージョンの審査記録。MDMと連携することを前提に弊社用意のサーバとRestAPIで通信し、一部ローカルネットワークの別端末とTCP/IP通信するような業務アプリです。


(これだけを見ると普通のAppStore公開アプリと変わらない。そして実際にそう)

審査待ちから審査okとなるまで丸2日もかかってないことが分かります。そして以下は本アプリ5回目のアップデート申請時の審査記録。


(初回の申請もアップデートも変わらない。約2日)

AppStoreの公開アプリに関わったことがある方は「あぁ確かにほぼ変わらないね」という感想を持って貰えると思います。お客様のカスタムApp開発・申請を御支援させて頂くこともありますが、やはり同様です。初めての申請で24時間待たず審査通過する激速ケースもあります。これも公開アプリと同様ですね。

 

カスタムAppの審査難易度は?

カスタムAppの審査は、公開アプリと同様に App Store Review ガイドライン に沿ってレビューされます。


(業務用アプリ向けの審査基準がある訳ではなく、通常のAppStore公開アプリと同様の基準で審査される)

AppleのABM(Apple Business Manager)のオフィシャルドキュメントにも以下の記載があります。

Appの審査:カスタム配付のために送信される各カスタムAppおよび各アップデートバージョンには、AppleによるApp審査プロセスが実行されます。App Store Appと同じApp ReviewガイドラインがカスタムAppに適用されます。

同じ基準である以上、やはり基本的な違反は普通にrejectされますので App Store Review ガイドライン に改めて目を通しておくことをお勧めします。

起動直後に落ちるとかボタンがあるのに機能しないなどアプリとして致命的な不具合が残っていたり、推奨されないAPIを使用しているとか、Webサイトを閲覧するだけのアプリとか、Appleのロゴや製品名をアプリ内で無断で使っているとか、基本的な違反はやはりリジェクトです。


(App Review のページの「よくあるAppの却下理由を回避」のセクションも参考になる)

なお(2008年以降100個以上のアプリを申請に関わってきた)弊社感覚ですが、カスタムAppの審査では、公開アプリで時折ある理不尽さを感じることが余りないような気がします。恐らく公開アプリでリジェクト問題に悩まされがちな、課金・広告・著作権・個人情報収集といった要素が業務系アプリにはそもそも含まれにくいからかも知れません。

公開アプリでは、Webサイトをラップしただけのアプリでリジェクト(Guideline 4.2 最低限の機能の違反)されることもよくありますが、エンタープライズiOSでは通常 MDM 経由で Webクリップ による擬似的アプリ配布が可能なので、このリジェクト問題に困ることも余りありません。


(Webクリップを含む構成プロファイルをMDMで配布することでWebアプリを配布できる)

近年(2019年以降)Appleは業務用アプリをカスタムAppにするよう推奨しています。

かつての定石であるADEPの契約申し込み画面からカスタムAppに誘導していますし(参考)、AppStore公開アプリで申請したときにアプリの用途や想定ユーザを尋ねられ「それならカスタムAppにして下さい」と誘導される場合もあります。そのような背景もあるため、基本を抑えていれば余程のことが無い限りカスタムAppのリジェクトで悩まされることはないと思います。

 

以上、カスタムAppの審査について紹介しました。カスタムAppの審査を過度に恐れず、カスタムAppを積極的に活用してみて下さい。

2021.4.5

カスタムApp(CustomApp)とは何か(5)〜自社専用業務アプリを従業員の個人所有端末に配布する〜

前回からカスタムAppを社内配信する方法について紹介しています。

前回はABMとMDMを使って社用管理端末にカスタムAppを配布する方法について書きましたが、本稿ではもう一つの配布方法である引き換えコードについて紹介します。(上図の中央の茶色線)

 

引き換えコードを使うケース

カスタムAppの配布は原則MDM連携です。ただMDM管理下にない端末にカスタムAppをインストールさせたい場合もあります。例えば以下のようなケースです。

  • 社用端末はあるが都合でMDM管理できない端末がある場合
  • 社用端末を用意せず個人所有のiOS端末を業務にも使って貰っている場合
  • 社内報アプリのように社用端末を前提とするには大げさ過ぎるカスタムAppが対象になる場合

等々、企業や業務の都合、アプリの種類によってMDMで集中管理…とはいかない時は引き換えコードでカスタムAppを配布する必要があります。

それでは具体的に引き換えコードでカスタムAppを購入する方法と、従業員の端末にインストールして貰う方法(配布方法)について見てみましょう。

 

引き換えコードでのカスタムApp購入と配布

カスタムAppの申請が通過すると自社のABM画面に現れます。(申請についてはカスタムApp(CustomApp)とは何か(2) 〜ABMとの関係と申請方法について〜を参照)

目的のカスタムAppを選択して、ライセンスの種類を「引き換えコード」にします。


(MDMと連携させる管理対象ライセンスとは違い「割当先」 のような概念はない)

取得したい数を入力して [入手] をクリックします。


(1000や10000などの大きな数も指定可能。5000を超える場合はライセンス発行に時間がかかる → 参考)

多くの場合カスタムAppはその性質上0円ですが、0円以外の場合は指定数と価格を積算した金額がABMに登録したクレジットカードで決済されます。購入が完了するとカスタムAppの詳細画面の最下部に「引き換えコード」という欄が現れます。


(ダウンロードリンクは購入直後は表示されないため、5分10分程度待つと良い)

引き換えコードで購入する度に行が追加されていきます。購入ごとにダウンロードリンクが用意されますので、クリックしてExcelファイルを入手します。

Excelファイルには、引き換えコード購入に関する基本情報と、購入した個数分の12桁の英数字列が列挙されています。A列が引き換えコードです。各コードに対応するURLも一緒に提供されます。

 

カスタムAppの引き換えコード配布と留意点

配布する前に、引き換えコードは再利用できないことに注意しましょう。


(コード一覧のExcelファイルで使用済みのものは redeemed と表記される)

Aさんが使った引き換えコードを、Bさんが使うことはできないということです。BさんにはBさん用の引き換えコードを割り当ててあげる必要があります。もし引き換えコードが不足する場合はABMから追加購入します。

重複しないよう各従業員に引き換えコードを割り当て、どう配布するのが良いか。これは企業や業務の都合、アプリの特性によるでしょう。確実なのは手作業を避け、社内システムやプログラムと連動させることです。弊社では以下のような運用を推奨しています。

  • Excelから一覧部分のみを切り出してCSV化して既存社内システムに取り込む
  • 従業員ID・名前・メールアドレスなどの既存テーブルと結合して管理
  • 1行単位でメール送信するか、従業員IDをキーに社内ポータルのマイページ等に掲載する

事情はそれぞれ異なるでしょうから、紐付けが管理できて重複なく配布できる仕組みをあらかじめ検討しておくことをお勧めします。

一番やってはいけないのは、Excelファイルを共有フォルダで全社共有して適当にコードを選ばせる方法です。重複問題が発生し易いですし、何よりコード一覧が関係者以外に漏洩してしまうリスクを高めます。カスタムAppはABM利用企業の従業員や業務委託者以外に配布してはいけないことに留意して下さい。

 

引き換えコードでカスタムAppをインストールする

従業員に配布するのは、コードでもURLでもどちらでも構いません。以下にそれぞれの使い方を紹介しますので、社内都合や事情に合わせて選んで下さい。

引き換えコードそのもの

12桁英数字の引き換えコードそのものの配布を受けたら、iOS端末上でAppStoreアプリを起動して、右上のAppleIDアカウントアイコンをタップします。

アカウントメニューが現れますので、[ギフトコードまたはコードを使う]をタップします。

カスタムAppのインストールはカメラからの読み取りには対応していませんので、[コードはキーボードでも入力できます]をタップします。

引き換えコードを入力して[完了]し、最後に[コードを使う]をタップします。

しばらくするとカスタムAppがインストールされ、HOME画面に現れます。

引き換えコードつきのURL

URLで提供を受けた場合、そのURLを mobile Safari で開くだけでカスタムAppのインストールが完了します。iOS14以上の端末でデフォルトブラウザを変更している場合は、明示的にSafariでURLを開いて下さい。

URLを開くだけで、自動的に引き換えコード入力とインストールまでが完了します。楽ですね。


(インストールされるカスタムAppのアイコンが表示される)

ただ注意しなければいけないのは、iTunes Store アプリがインストールされていなければならないという点です。iOS端末にiTunes Storeアプリがインストールされていない場合、引き換えコード用のURLを踏むと以下のようなダイアログが表示されます。


(iTunes Store アプリがない場合、復元を求められる。ユーザによっては混乱してしまうかも知れない)

これは意外に見落としがちなポイントです。iTunes Store アプリは標準で手動削除できますので、カスタムAppの引き換えコードをURL配布する場合は、iTunes Store アプリが必要なことを周知しておきましょう。

 

以上、カスタムAppを引き換えコードを使って配布する方法をご紹介しました。MDMを使えない企業や、MDM管理できない端末がある場合に活用を検討してみて下さい。

ただどちらを選ぶにしても、引き換えコードはライセンス配布より面倒なのは違いありません。運用を楽にしたい、ユーザのサポート対応時間を少なくしたい、と考える場合はMDM導入を検討するのが先かも知れません。

2021.3.29

カスタムApp(CustomApp)とは何か(4)〜自社専用業務アプリをMDM連携で配布する〜

カスタムAppの配布にはABMが必要となります。

カスタムAppとは何か(2) 〜ABMとの関係と申請方法について〜 で、非公開Appの登録領域を確保するためにABMが必要であると解説しましたが、ABMはカスタムAppを配布する側でも重要な役割を担っています。


(ABMはカスタムApp登録の器を用意してくれるのと同時に配布手段も提供してくれる)

これから2回に渡って、ABMを使ったカスタムAppの購入と配布について解説します。

 

カスタムAppを配布するときの注意点

カスタムAppを「配布」するといっても、まずは「購入」する必要があります。(例え0円のアプリでも)まず「購入」ありきの配布になるわけですが、気をつけなければならないのは購入の方法が配布の方法を決めるという点です。

購入してから配布方法の内訳を決めるのではないため、どのように配布するかを決めた上で購入する必要があります。以下にカスタムAppの購入方法と配布方法の関係を並べました。

購入方法 配布先となる端末 説明
管理対象ライセンス MDM管理端末 推奨。会社が購入&配布する端末にカスタムAppをインストールする場合
引き換えコード MDM非管理端末 個人所有の端末にカスタムAppをインストールする場合(いわゆるBYOD)

カスタムAppの配布先となる端末が、MDM配下の管理端末なのか、そうでないのか、きちんと把握したうえで配布計画を立てる必要があります。

カスタムAppは¥0で登録されることが大半ですので無計画でも大きな問題にはなりませんが、もしカスタムAppが有償なら購入費用を無駄にしてしまう可能性があります。(カスタムAppとは何か(3)で紹介した既存アプリのカスタマイズ版が有償カスタムAppとして提供される場合もある)

 

管理対象ライセンスとして一括購入する

カスタムAppの申請が審査通過してから Ready for Sale 状態になると、申請時に指定した組織IDのABM画面上に当該のカスタムAppが表示されて「購入」できるようになります。

カスタムAppの一覧から目的のアプリをクリックし、ライセンスの種類を「管理対象ライセンス」にします。右側の「割当先」には、ABMとMDMを連携していればABM利用申請時に指定した自社組織名が唯一の選択肢として表示さます。(割当先の詳細は別の記事で解説予定)

数を指定して入手をクリックします。最初に数個だけ購入して後から追加していくこともできます。

購入が無事に終われば、購入数分の使用権(つまりライセンス)を入手できたことになります。入手したライセンスの個数はカスタムAppごとに管理されており、カスタムAppの詳細画面に表示されます。

使用中0とありますが、購入直後はまだどの端末にもインストールされていませんので当然ですね。管理対象ライセンスで購入したカスタムAppを配布するには、後述のMDM側の操作が必要となります。

 

MDMで端末とアプリを紐付けて同期する

ABMで購入したアプリのライセンス情報は、ABMと連携しているMDMに自動的に転送されます。早ければ購入から5分後ぐらいにはMDM側でライセンス情報を確認できます。


(ABMでの購入情報は連携したMDMに自動で同期される。赤枠がカスタムApp。AppStore公開アプリのライセンスも一緒に同期される)

次にMDMの画面から、どの端末にカスタムAppを配布するのかを設定します。設定のUIはMDMサービスごとに異なりますが、端末のグループ単位でカスタムAppを紐づけて一斉配信する機能を備えているのが一般的です。


(BizMobileではテンプレートという概念を使ってカスタムAppを複数の端末に一斉配信する)

設定を保存すると、あとはMDMの仕組みでアプリが端末に配布されます。


(MDM管理下の端末が監視モードならダイアログ表示もなくサイレントインストールされる。参考 → iOSの監視モードとは何か)

もし端末数に対してカスタムAppのライセンス数が不足している場合は、MDMサービスが警告等を表示してくれますのでABMで追加購入しましょう。

 

以上、カスタムAppをMDM連携で配布する方法を紹介しました。

カスタムAppを社内配布する場合、基本的に本稿で紹介したMDM経由の配布が推奨されます。管理側のオペレーションだけでカスタムAppの配布作業が完結するからです。

端末をMDM管理できない事情があったり、そもそもアプリの用途がMDMで管理される端末を想定してない場合もあるでしょう。そんな時はもう一つの配布方法である引き換えコードを活用することができます。次回の投稿では、カスタムAppを引き換えコードで配布する方法について解説します。

2021.3.22

カスタムApp(CustomApp)とは何か(3) 〜自社アプリのカスタマイズ版を顧客企業に提供する方法〜

前回の投稿で、カスタムAppを申請するパターンが複数あると書きました。以下に表を再掲します。

  開発スタイル ADP契約主体 カスタムApp申請
(A) エンドユーザ内製 エンドユーザ企業 エンドユーザ企業
(B) 開発会社に外注 エンドユーザ企業 エンドユーザ企業 or 開発会社
(C) 既存アプリのカスタマイズ版 既存アプリの開発元企業 既存アプリの開発元企業

本稿では、カスタムApp活用法のパターン(C)について解説します。

カスタムAppは、iOS対応の企業向けサービスのメーカにとって、共通アプリをAppStore公開する以外の新たなアプリ提供方法になりえます。本稿をビジネスモデルを考える参考にして貰えればと思います。

 

アプリを少しだけカスタマイズしてくれないか

通常、企業向けサービスを提供する場合、ログイン機構を持ったサーバシステムと専用アプリを開発して、アプリはAppStore公開するのが一般的です。


(法人向けサービスのクライアントiOSアプリの例。接続サーバ情報やアカウント情報で篩い分ける)

サービス導入を決めてくれた顧客企業には「AppStoreにお客様に共通の専用アプリを公開しているのでダウンロードしてください。サーバとアカウント情報はこれこれです」と案内するのがよくある形態です。

しかしサービス導入を検討してくれている企業から、時々こんなリクエストを受けることがあります。

  • アイコンをウチで指定するアイコンやアプリ名にできないか?
  • 接続サーバの入力が面倒だから設定済みの専用バージョンを作ってくれないか?
  • ◯◯の機能だけをオフにしてくれないか?

アプリとしては基本このままで良いのだけど、ちょっとだけカスタマイズして欲しい…という要望ですね。または逆にメーカ側が、特別な顧客にはアイコンやアプリ名を変えて個別にアプリ提供したいと考える場合もあるかも知れません。こんな時にカスタムAppが役に立ちます。

 

カスタムAppを使ってカスタマイズ版を申請する手順

カスタマイズ版の申請では、業務用アプリの受託開発パターン(冒頭の表の(A)(B))と違って、メーカ企業側のADPアカウントを使うことに注意して下さい。カスタマイズ版を提供する先の顧客企業がADPを契約する必要はありません

前回の投稿と一部かぶりますが、以下にカスタマイズ版の申請手順を紹介します。

(1) まず、カスタマイズ版アプリを提供する先となる顧客企業にABMの契約をして貰います。

(顧客企業側ではADPは不要だがABMは必要)

(2) 顧客企業がABMを使えるようになったら、ABMの [設定]→[登録情報] に表示される組織IDと組織名を教えて貰います。

(ABMにユーザ登録機能があるが、メーカ側が操作代行用ユーザを作って貰うべきではない。ABMは契約企業内のみで使う)

(3) 次にADPのDeveloper画面です。カスタマイズ版は別の新規アプリとなるため、App ID を新しく作成します。顧客企業名が分かるIDにしておくのが良いでしょう。

(4) さらに AppStore 用の provisioning profile を作成します。ここで (3) で作った App ID に紐づけます。

(AppIDは3.で指定したものを指定する)

(5) App Store Connect で新たなアプリを作成します。

(バンドルIDは(4)で作成したものを指定する)

(6) アプリ詳細画面で配信設定を非公開にし、(2)の組織IDと組織名を入力して保存します。

(同じカスタマイズ版を複数の組織に提供する場合は組織情報を複数入力すると良い)

(7) Xcodeでターゲットを新たに作成し、(3) で作成した provisioning profile を指定。リソースやロジック・プロジェクト設定等を顧客のカスタマイズ要望に沿って実装または設定します。

(提供先の顧客の数だけターゲットを作成する。ただターゲットだけにこだわる必要はなくビルドし分けられたら何でも良い)

(8) ビルドしてアップロードし、App Store Connect で各種メタデータ登録の後に申請します。

以上でカスタムAppの申請は完了、後はAppStore公開アプリと同様に審査待ちとなります。リジェクトされたらAppleからの指摘やガイドラインに沿って対応します。申請が通って Ready for Sale 状態にすると、顧客企業のABMのカスタムAppのページに現れます。

ABM上に表示されたカスタムAppは、この後「MDM」か「引き換えコード」かの2種類の方法で顧客企業が社内で配布します。(カスタムAppの配布方法についてはまた別の記事で紹介します)

以上がカスタムAppを使ったカスタマイズ版アプリの申請手順です。ポイントを整理すると

  • 顧客企業にABMの利用申請をして貰い、組織IDと組織名を教えて貰う
  • App Store Connect で公開アプリと同様に新規のアプリ登録する
  • 配信の設定を非公開にして、組織IDと組織名を入力する (公開アプリとの唯一の違い)
  • Xcodeでターゲットを作りバイナリをビルドし分けてアップロードし申請する

となります。

 

InHouseを使ったカスタマイズ版の提供について

ところで、古くから法人向けアプリを提供しているメーカ企業の中には、顧客にADEP(Apple Developer Enterprise Program)の契約をして貰うことを前提に InHouse アプリとしてカスタマイズ版を提供している場合があります。


(ある既存サービスの特定顧客向けアプリを InHouse でバージョン毎に提供している様子)

運用は以下のようにしている場合が多いでしょう。

  • まず顧客企業にADEPを契約して貰う
  • メーカ側はエンドユーザ企業の InHouse 用 Provisioning Profile と秘密鍵を入手
  • カスタマイズ版をInHouseビルドして ipa ファイルを納品
  • エンドユーザ企業がMDMやOTA、有線で社内配信

ただ今はADEPの取得が難しいため、この方法で法人向けアプリを提供しているメーカ企業は、上述のカスタムAppを使った運用に切り替えていくことをお勧めします。

カスタムAppにすると以下のようなメリットもあります。

  • お客様のADEP契約コストが不要 (¥37,800/年)
  • お客様の秘密鍵を預かるリスクからの開放
  • 年に一度のInHouseアプリ再署名や、MDM経由の Provisioning Profile 配信が不要

特に、顧客のMDM導入を前提とせずInHouse版を毎年ビルド提供しているメーカ企業は、カスタムAppによる大幅な工数減が見込めます。(アプリのバージョンアップが頻繁にある場合は余り工数減にはなりませんが)

なお、自社アプリのカスタマイズ版の提供が初めて・未体験、というメーカ企業におかれては、この InHouse アプリを使う方法ではなく、前述のカスタムAppを使った方法で提供するようビジネスモデルを設計して下さい。事前に、自社でABMを使えるようにして一連の流れを確認しておくと良いと思います。

 

以上、カスタムAppを使って自社アプリのカスタマイズ版を提供する方法について紹介しました。次の記事ではカスタムAppを受け取って社内配布する側について紹介しようと思います。

余談

紹介してておかしな話ですが、メーカ企業側は、できればカスタムAppでカスタマイズ版アプリを提供しないほうが良いです。アプリはAppStore公開版のみとするのがソース管理上も楽だからです。ロジックにまで手が入るとブランチがカオスなことになります。

顧客企業からアプリ名やアイコンの変更を求められた場合はカスタムApp化は避けられませんが、サーバ設定値だけカスタマイズしたい…という設定値だけの変更やロジックの軽微なカスタマイズで済む場合は、カスタムAppより Managed App Configuration を使ったカスタマイズが楽です。これについてはまた別記事で紹介予定です。(MDMベンダーに問い合わせてみるのも良いでしょう)

2021.3.15

カスタムApp(CustomApp)とは何か(2) 〜ABMとの関係と申請方法について〜

前回の投稿の続きです。前回はカスタムAppの概要や他の配布方法との比較をしました。本稿では、カスタムAppの申請について紹介します。

 

カスタムAppとABMの関係

前回のカスタムAppとは何か(1)の投稿で、カスタムAppは、AppStore内の非公開領域に登録されたアプリで、その非公開領域は企業毎に分かれていることを紹介しました。

AppStore内にある、この企業毎の非公開領域(上図のA,B,C社の領域)はどうやって作って貰うのでしょう。Appleに直接申請するのでしょうか?ADPを契約した企業なら勝手に作られるものなのでしょうか?

…答えは ABMを利用申請して受理されると作られる です。

非公開アプリを使う企業がABMを利用申請することに注意して下さい。ABMは、デバイス・アプリ・AppleID・MDMを管理する法人用ポータルサイトですが、DUNS番号を持つ企業であれば企業規模によらず利用申請ができます。(参考 : ABMとは何か)

ABMの利用申請がAppleに受理されると、自社専用のAppStore非公開領域が作られ、領域を識別する7桁の組織IDが割り当てられます。


(ABM上で組織IDを確認できる。カスタムAppでは組織IDが重要になる)

この組織IDをカスタムAppの申請先として指定します。

 

カスタムAppはどのように申請するのか

カスタムAppとは(1)の投稿で書いた通り、カスタムAppもAppStoreアプリなのでした。ですので、カスタムAppの申請方法はAppStore公開アプリと一点を除いて全く同じです。


(AppStore公開アプリを作成するのと同じ)

App Store Connect でアプリを新規作成し、Xcodeでビルドした ipa をアップロード、各種メタデータを登録して申請する…。手続きは全く何も変わりません。

Provisioning Profile には AppStore 用のものを使用。App Store Connect で作成した「バージョン」に対して、ビルドしたipaファイルを Xcode または Transporter を使ってアップロードするのも一緒です。


(XcodeからカスタムAppをアップロードする様子。通常のAppStore公開アプリと何も変わらない)

もちろん、TestFlight の内部テスト・外部テストも使えます。課金のTierを設定したり配信国を決めるところも一緒です。唯一公開アプリと違うのは、配信の設定のみ。[価格及び配信状況]→[Appの配信方法] の画面で非公開を選択する点だけです。


(カスタムAppを申請するとは、つまり、非公開でAppStoreに申請するということ)

非公開を選べば、もうそのアプリはカスタムAppです。画面上に新たな入力フィールドが現れますので、ここで先ほどの組織IDを使います。


(組織IDと組織名を入力する。組織名もABMで確認できる)

ここで、どの企業の非公開領域にアプリを登録申請するか指定するわけです。UIから想像がつくと思いますが複数の組織IDを指定することもできます。(同じアプリを色んな企業に非公開配布できるということ)

ここまでの内容で、カスタムApp申請時に非公開領域の組織IDが必要で、非公開領域と組織IDはエンドユーザ企業がABM利用申請して作られることが分かりました。ということは、カスタムApp申請には、アプリを使うエンドユーザ企業にまずABM申請をして貰う必要があることを意味します。

一方、申請する側のADPはどうでしょう?

 

カスタムAppのためのADPは誰が契約するのか。エンドユーザ?開発会社?

カスタムAppの申請にはADP(Apple Developer Program)の契約が必要です。ではそのADPは誰が契約すべきなのでしょうか?これは、案件の性質やアプリの種類によって異なります。

以下にカスタムAppのパターンを全て列挙してみました。

  開発スタイル ADPを契約するのは カスタムAppを申請するのは
(A) エンドユーザが内製する エンドユーザ企業 エンドユーザ企業
(B) 開発会社に外注する エンドユーザ企業 エンドユーザ企業 or 開発会社
(C) 既存アプリのカスタム版の提供を受ける 既存アプリの開発元企業 既存アプリの開発元企業

エンドユーザ企業が独自の業務用アプリを開発しようとすることが多いので、通常は(A)か(B)です。(C)は既存アプリのカスタマイズバージョンを個別提供する(提供して貰う)パターンです。長くなりますので (C) は別の記事で紹介します。

上の表から読み取れる通り、ADP契約はアプリの著作権・所有権を持つ企業が取得します。

エンドユーザ企業視点で書くと、自社専用アプリを新たに開発するなら内製か外注かによらずエンドユーザ自身でADPを契約しなければなりません。

開発側視点で書くと、受託開発アプリが最終的に顧客の「もの」なら、エンドユーザのADPアカウントを使う必要があります。ADPが未契約なら契約して貰い、App Mangaer の権限を貰いましょう。自社(開発会社)のADPアカウントからお客様の受託開発アプリをカスタムApp申請してはなりません。というのも、エンドユーザ側のABMでアプリの見え方に不都合が生じるからです。


(ある顧客企業に feedtailor Inc. のADPアカウントからカスタムApp申請した時の顧客側ABMの画面。feedtailor Inc. のアプリとして表示される)

ABMのカスタムAppの画面、上図の赤枠部分で、カスタムApp申請をするADPアカウントの企業名が表示されます。これが気持ち悪くなければ別に構わないのですが、発注するエンドユーザ企業の立場では普通に違和感を覚えるでしょう。自社の業務アプリなのに、ABM上では発注先企業のアプリのように表示されるのですから。

ということで、自社専用アプリを独自開発したいと考えるエンドユーザ企業は、カスタムApp申請用にADPの契約は必須です。またカスタムAppを使うために、ABMの利用申請も必要になります。

 

以上、カスタムAppとABMの関係、申請の方法、カスタムAppでADPを誰が契約するのか説明しました。ポイントは以下の通りです。

  • AppStoreの非公開アプリ用領域はABM利用申請が受理されると作られる
  • カスタムAppはAppStore公開アプリと申請方法がほぼ一緒
  • AppStore申請時に「非公開」を選ぶとカスタムApp申請となる
  • カスタムApp申請では組織ID・組織名を指定する

次回はさらに深掘りして、カスタムAppの特殊な使い方である、既存アプリのカスタマイズバージョンの提供について解説します。

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