2023.9.4

そろそろADEP契約更新ができなくなるかも知れない…その後(3)

2022年春頃より更新に審査が必要になってしまったADEP。年に一度、更新できるかどうかを気にかけなければならなくなったわけですが、意外に更新できているとか、ADEP契約終了後の InHouse アプリ挙動についてとかを過去に投稿しました。

本稿はその続きとなりまして、2023年に新たに観測された動きを共有したいと思います。以下が目次です。

それでは順に見ていきましょう。

 

更新審査も2回目に突入

2022年からADEP更新の審査が始まりましたので、2023年後半にもなるとADEP更新審査が2回目という企業様も増えてきて「2回目の更新も無事に終わった」という声をお聞きするようになりました。

弊社見解ですが、ADEP公式ページに記載のある条件を満たし続けてさえいれば、当面の間は更新し続けられるのではないかと思います。


(ADEPに適うかどうかの条件は公式ページに列挙されている。更新不可となる可能性はこちらの投稿を参照)

従業員が100人以上を擁する実在企業であり、ADEPを自社従業員の業務用アプリにのみ使用している。これを胸を張って言える状態なら余り恐れる事はなさそうです。毎年ドキドキはしますけどね。この状況をふまえてどう動くかには企業の性格が出ます。大きくは、

  • (A) ADEP更新が拒否されたらその時に動こう
  • (B) 万が一に備えて今のうちに体制を整えておこう

に二分され、Aがまだまだ多い印象ではあるものの、Bのスタンスの企業様からご相談が増え始めている状況です。備えあれば憂いなしということですね。

 

InHouseアプリはADEP契約終了後から余命90日

さて。以前の投稿そろそろADEP契約更新ができなくなるかも知れない…その後(2)で、こんなことを書いていました。

実のところADEP更新を拒否されて期限日から91日目以降でも、InHouseアプリは動き続けるようです。

2022年の検証では、公式ドキュメントに明記されている配布済みInHouseアプリの起動猶予期間90日間が経過してもアプリは動き続け、結果的に Provisioning Profile の有効期限まで起動することができました。もちろん追加のインストールも可能。


(iOSDC2023のトーク資料より)

つまり、ADEP契約終了日の前日に Provisiojning Profile を更新すれば、最長1年の移行猶予期間を確保できると見込めたわけです。

ですが、2023年に新たな挙動が観測されました。非情にも(?)ADEP契約終了日から90日後、「もう配布用証明書を無効化したので、InHouseアプリは以後使えなくなりますよ」という主旨のメールが届いたのです。

Appleの公式ドキュメントによると、iOSはInHouse配布のアプリ起動に際し、その配布用証明書の有効性を3日〜7日の周期で確認しています。ADEP契約終了から90日後に Apple が強制的に証明書をRevokeするため、起動時チェックで証明書の失効確認→起動不可…となってしまうわけですね。

インストール時にも証明書チェックはされますから、MDM だろうが Apple Configurator だろうが OTA だろうが、手段に関係なくインストールも失敗します。

現場では次々とInHouse配布アプリが動かなくなっていく状況になりますので、InHouseアプリの生殺与奪をAppleが完全に握っていることを象徴する挙動と言えるでしょう。ちょっと怖いですよね😨

 

今後、どうなるのか

以下にADEP(iDEP)の歴史を図示してみました。


(iOSDC2023のトーク資料より)

2020年代に入ってからは、ADEPは随分と追い込まれてきた気がします。新規は事実上NGとなり(2020)、更新の審査も加わり(2022)、90日の有効期限も発動するようになりました(2023)。

さらに、余り知られていませんが、Appleが特別な個人(例えばWWDC参加者)や企業(例えば提携パートナー)に過去に提供してきたアプリも実はApple名義のInHouseアプリで、それらも公開アプリや非表示Appに変わってきた例があります。Apple 自身も ADEP(InHouse) は不要だと態度で示しているのですよね。

そんなADEP(InHouse)にどんな未来が待ち受けているでしょうか?もちろん、Appleのみぞ知る…ですが、上記の状況を踏まえると、

  • ADEPの取得が以前のようにまた容易になる
  • ADEPの更新審査が以前のように不要となる

という未来の可能性は限りなく低いと考えられます。とはいえ、じゃぁ来年(2024年)以降にADEP更新できない企業が続出する…という可能性も低そうです。永遠ではないが今すぐなくなるわけでもなさそうだけど毎年少しドキっとする、といったところでしょうか。

 

では、どうすべきか

状況を総合的に見ると、ADEPの未来は明るくはないと考えます。

もう覚悟を決めて移行してしまって、ADP(カスタムApp)での自社業務用アプリ運用ノウハウを早期に構築されるのをお勧めしたいところです。無くなることはありませんから、InHouseよりも安住の地です。これを機に社内の業務用アプリの開発・運用体制を一斉に整理するというのもアリかも知れません。

InHouseのような自由は享受できませんが、メリットもあります。


(iOSDC2023のトーク資料より)

万が一ADEP契約が更新できない!となってからの移行期間は決して長くありません。90日間+αの期間で、

  • App Store と App Store Connect を学び開発の進め方を変え
  • TestFlight について学びテストのやり方を変えて
  • ABMとMDMを整備して配信も完了させ
  • 従業員の教育も終わらせられるか

…ということに思い巡らされても良いと思います。

ということで、ADEP(InHouse)を今も利用している、特に関係者が多い大手企業様におかれては、Sustanableな業務用アプリ運用のために次の一手の検討をお勧めします。いざその時が来た時のインパクトを認識されてる企業様であるほど、もう動きはじめておられる印象です。

 

以上、ADEPのその後について記しました。最後に、ADEPの更新や審査落ちに関する一連の投稿のリンクを以下に列挙しますので参考にして頂ければと思います。

また新たな動きがあれば追加で投稿しようと思います。

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