2020.4.29

MDM環境を無償で用意する方法はあるか?

MDMとは何かというエントリでMDMを以下のように紹介しました。

MDMとは、その名称 Mobile Device Management (モバイル端末管理) から想像できる通り、
多数のモバイル端末を管理するための仕組み(プロトコル)、あるいはサービスのことを指します。

賢明な方は、MDMプロトコルが元になっているのなら無償で利用可能なオープンソースMDMがあるのではないか?と思われたことでしょう。


(Photo by Arnel Hasanovic on Unsplash)

 

存在するが運用にあたっては要注意

正解です。実はオープンソースなMDMが存在します。幾つかあるうちで有名どころは以下の2つです。

残念ながら、いずれもGitHubのリポジトリを見る限りcontributorも少なく、活発に活動しているようには見えません。その点は留意しなければなりませんが動かないわけではありません。

実際に動作させたという数少ない日本語情報として、2018年の iOS Developer Conference で講演された『オープンソースMDMのmicromdmを用いて、個人でデバイス管理をやってみる』があります。実際に動作検証もされているようで、発表時のビデオやPDF資料が公開されているので参考になります。(MDMの仕組みが分かり易く解説されています)

ただ、上記2つのオープンソースMDMのREADMEでも、iOS Developer Conference 2018の講演内容でも、2020年4月現在では一部正しくない情報になってしまっているので注意が必要です。特に、以下の MDM用のPUSH証明書に必要なCSRについての記述です。

First, you need to enroll your organization in the Apple Developer Enterprise Portal.
Enrolling costs $299/year and requires that your organization have a DUNS number.

MDMにはADEPが必要というくだり。ADEP契約後の apple developer 画面から MDM CSR を作成すべきとされていますが、実のところADEPは不要で、現行の apple developer console には該当する項目は存在しません。現在は、MDMサービス側から提供されるCSRを使用します。

では、オープンソースなMDMを使う場合はどこからCSRを入手すれば良いのでしょうか。その課題に応えるのがMDMCertです。

法人組織限定ですが申請するとCSRを提供して貰うことができます。MDMCert では法人名義でないとCSRを発行して貰えないのは留意すべきポイントです。

お金をかけたくないのでオープンソースという発想は往々にしてありますが、ことMDMに関しては日々の業務に直結しますので余りお勧めはしません。オープンソースMDMは、あくまでMDMプロトコルを学ぶ教材として使うべきです。

教材という意味では、Apple が公開している MDM reference も参考になります。

個人の方の場合は、法人格を持たない限りMDMサービスを無償で自由に触るのは困難と考えた方が良いでしょう。どうしても個人でMDMを触ってみたいという場合は、MDMベンダーやMDM取り扱い業者に相談するしかないですが、なかなか難しいと思います。

 

MDMにお金をかけたくない…

たかだか1台あたり月額300円です(市場相場についてはMDMとは何かを参照のこと)。正直、MDMにお金をかけたくないと考えるぐらいなら、そもそもiOSを業務で導入するのをやめたほうが良いかも知れません。

ランニングコストは嫌だが初期費用だけならかけても良いという考え方の場合は、Apple が公式に提供している macOS Server (¥2,400) に搭載のプロファイルマネージャを使用するのが良いでしょう。

ただ安価に始められてランニング不要ではありますが、macOSでのサーバ運用技術が必要であること、Appleに対人サポートを期待できず自己責任になること、MDMの全貌を理解していなければ実運用に足る設定は難しいこと、などを鑑みて余り積極的にはお勧めはできません。

結局は、最も安価なMDMを使いましょうというところに落ち着きます。弊社では初期費用ゼロで最も安価に使える BizMobile Go! をお勧めしています。

 

ということで、本稿ではオープンソースのMDMや関連リソースについて紹介しました。MDMサービスを開発する事業者でもない限り既存のMDMサービスを契約することが推奨されます。

MDMを使ってみたい、MDMを評価してみたいという法人の方は、弊社でMDM設計・運用支援、設定代行作業までお請けしておりますのでよろしければご連絡下さい。開発会社様の技術支援・MDMレクチャーも可能です。(弊社はMDMのサポートのみという体制)

2020.1.27

MDMとは何か 〜今さら聞けないMDMの基礎〜

(最終更新日 : 2020/9/10)

iOS4が登場した2009年、iOSは MDM(Mobile Device Management) による端末集中管理に対応しました。あれから10年。MDMの導入は今や常識で、MDMなきiOS端末の業務活用はありえません。

もしお客様のiOS端末導入や業務用アプリ開発を支援する立場なら、MDMを導入済みかどうかの確認、もし未導入であるなら導入の提案、できれば導入と運用の支援まで行いたいものです。

本稿ではMDMの基礎を改めて振り返っておきたいと思います。


(大量のiOS端末を手動設定する様子。MDMを正しくフル活用すればこのような手間はほぼ不要となる)

 

MDMでできること

MDMとは、Mobile Device Management (モバイル端末管理) という言葉から想像できる通り、多数のモバイル端末を管理するための仕組み(プロトコル)、あるいはサービスのことを指します。

iOS端末に限らずAppleTVや、他にも Android 端末、Windows端末、macOS端末も対象になります。が、多くの場合、iOS/Android端末を管理する為に導入します。

MDMができることは以下の4つとされています。MDMサービスによって言い方や分類は微妙に異なりますが、集約すると以下の4つと考えていいでしょう。

機能 詳細
アプリ(コンテンツ)配布
  • AppStoreアプリの配布
  • CustomAppアプリの配布
  • InHouseアプリの配布
  • ブックの配布
設定配信
  • ProfileによるOS設定の配布
  • Managed App Configurationによるアプリ設定の配布
遠隔制御
  • ロック
  • パスコード削除
  • 管理者ロック(iOS9.0以上)
  • 再起動(監視対象のみ、iOS10.3以上)
  • リモートワイプ
情報収集
  • OSやシリアル番号、インストールされているアプリ等

MDMは、iOS等のモバイル端末導入時の懸念をほぼ全て解消します。もし以下のような心配が1つでもあるのなら、台数に関係なく1台だけでもMDMを導入するのがオススメです。

  • 万が一社員が端末をなくした時に情報漏えいしないか?
  • 配布する全端末をいちいち一個ずつ設定しないといけないのか?
  • 社員が端末で何をしているか分からないのではないか?
  • 業務で使用するAppStoreアプリを従業員に立替購入させるのか?

これらが気にならない責任者や情報管理部門はいないでしょう。MDMはこれらの心配を全て払拭してくれます。従ってMDMは法人では特に必須であり、iOS端末管理の1丁目1番地と言っても良い最も重要なサービスなのです。

 

MDMサービスはどこを選ぶべきか

MDMは通常、サードベンダーが提供するMDMサービスを契約・初期設定することで導入します。代表的なMDMサービスを以下にあげてみました。(以下、便宜上MDMサービスのことをMDMとよびます)

名称 ベンダー
BizMobile BizMobile
mobi connect インヴェンティット
CLOMO MDM アイキューブドシステム
Jamf Jamf
Meraki Cisco
AirWatch VMWare
Intune Microsoft

これらはほんの一部で、実は世界中に何十というMDMサービスがあります。どのベンダーも揃いも揃って自社のMDMがNo.1であると喧伝している面白い業界だったりします。

さて、どこがNo.1かはともかく。

MDMの導入にあたっては、直接ベンダーと契約するか、各メーカが定めている販売パートナーと契約を結びます。基本的に初期設定や運用は自社で行う必要があり、設計支援や運用支援までやってくれるところは稀です。

エンドユーザ企業の立場であれ、アプリを提案するSIerや開発会社の立場であれ、MDMを使いこなす自信が無い場合は、ベンダーや販売パートナーがどの程度サポートをしてくれるのかよく確認しておくべきです。(弊社は BizMobile の販売パートナーですが、設定・運用の代行や講習会、MDMから配布する業務アプリの選定/開発などMDMの周辺全てをご支援しています)

MDMの価格は、1台あたり月額300円、初期費用0円が業界標準です。それ以上の価格の場合、前節で紹介したMDMの主要機能一覧を参考に価格妥当性を見たほうが良いでしょう。よほどの理由がない限り、

  • 初期費用がかかるMDM
  • 1台あたりの月額が300円以上するMDM

はお勧めしません。

誤解を恐れずに言えば、モバイル端末を管理する目的のためならMDMはどこを入れても一緒です。というのも、MDMはMDMプロトコルに準拠したプログラムに過ぎず、実現できることは誰が作ってもほぼ全て同じだからです。

差別化が非常に難しく、特別な事情がない限り「このMDMでないとできない」ということはほぼありません。「FAXをしたい」という機能要件においては、どのFAX機を買っても変わらないのと一緒ですね。

MDMを使って何をしたいのか?もしその「何」が前節の機能一覧にあるのなら、どのMDMを使っても一緒です。無い場合は、そもそもMDMでは実現できない要件の可能性があります。

MDMは一度導入すると、ほぼ100%やめれない他のものに変えにくい性質のものなので、何がしたいのかを明確にし、サポートの充実度や価格面も勘案し慎重に吟味することをお勧めします。

 

MDMの技術的な仕組み

MDMがどのように動作するか、技術的な概要もおさえておきましょう。MDMは通常クラウド上で構築されておりブラウザから操作しますが、通信の流れは以下の通りとなっています。


(MDMでPUSH通知が非常に重要な役割を担う。常時オフライン前提の環境では原則MDMは使えない)

  1. MDMはその利用者の操作をトリガにPUSH通知サービス(APNs)にMDM用PUSHリクエストを投げる
  2. APNs は然るべきiOS端末にPUSHを飛ばす
  3. iOS端末はあらかじめ紐付けられたMDMと通信する

厳密には、2の通知によりiOS端末ではmdmdと呼ばれるMDMとの通信を司るプログラムが叩き起こされます。そして、MDMに対して「命令はなんでしょうか?」と問い合わせを行い、MDMからコマンド(命令)を受け取って実行、その結果をまたMDMに返す…というやりとりを行います。

MDMは常にこのトライアングルで動作しています。冒頭にあげた4つの役割(アプリ配布・設定配布・遠隔制御・情報収集)の全てです。そう、MDMはPUSH通知なくして機能しないのですね。

2009年当時、iOS4でPUSH通知機能の搭載が発表されました。アプリ開発界隈でとても歓迎されましたが、実はPUSH通知機能は同タイミングで登場したMDMを実現するためでもあったのですね。Appleがいかに早い時期からエンタープライズの世界を見ていたかが分かります。

 

最後に、MDMで重要な役割を担うPUSH通知に関連して、MDM用PUSH通知証明書について解説します。

AppStore向けにアプリ開発する際、PUSH機能を使うアプリごとにPUSH通知証明書の取得や設定が必要となりますね。デベロッパーの方はよくご存知だと思います。


(アプリ毎にAPNsへPUSHを投げるための証明書を作成する)

これと同様、MDMを使うにはMDM専用のPUSH通知証明書の取得や設定が必要となります。ただ、MDM用のPUSHはアプリ用のPUSHとは厳密には異なりますので、CSR生成や証明書取得の手順も大きく異なっています。

PUSH通知証明書はApple Push Certificates Portal で、MDM用のCSRを登録して入手します。


(Appleが特別に用意する証明書ポータルに、MDMサービス提供会社から入手するCSRを登録して申請する)

ここで登録するCSRはMDMサービスから提供されるもので法人しか入手できないため、必然的にMDMを使えるのは法人だけとなります。個人で入手する方法は残念ながらありません。(このため個人デベロッパーがMDMを前提としたアプリを開発するのは難しくなっています)


(BizMobileの初期設定画面で、MDM用の特別なCSRを入手する様子。各MDMが同様の機能を備える)

なお、一部のブログ等々でCSRをADEP(Apple Developer Enterprise Program)から入手するとの記載がありますが誤りですので注意して下さい。ADEPでもCRSを取得できますが、これはMDMサービスを開発するMDMベンダーが使用するものです。

 

ということで、MDMとは何か基本的なことと仕組みをご紹介しました。

上述の通り、弊社は主にBizMobileを推奨しています。黎明期からある国産MDMであり(あのMDMの内部は実はBizMobile…というケースもある)、運用のし易い作りでサポート体制もよく、価格もリーズナブルであるのがその理由です。MDMの導入支援・運用支援や代行作業をご希望の方は弊社までお問い合わせ下さい。

 

お知らせ : iOSDS2020で講演します

2020年9月19-21日開催が予定されているiOS関連で国内最大のイベント iOSDC2020 で、以下のようなタイトルでお話させて頂くことになりました。

40分にわたりエンタープライズiOSの全体像をご説明します。

本稿でご紹介したMDMにも言及します。MDMが必要となる背景やプロトコルの詳細もご紹介し、ADEP, CustomApp, 監視モード, Apple Configurator2, 構成プロファイル, Apple VAR, Apple Business Manager, DEP 等々が MDM とどう連携・関連するのかも解説します。

エンタープライズiOSの世界を概観できる他にないコンテンツとなっております。有償のイベントとなりますが、オンラインで視聴できますので iOSDC2020 のサイトからお申し込み頂き、是非ご参加下さい。

本サイトはACNメンバーの(株)フィードテイラーが運営するエンタープライズiOS情報サイトです

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