2020.1.27
デバイス管理(MDM)とは何か 〜今さら聞けないデバイス管理(MDM)の基礎〜
(最終更新日 : 2026/7/16)
iOS4が登場した2009年、iOSは MDM(Mobile Device Management) による端末集中管理に対応しました。あれから約20年。MDMの導入は今や常識となり、MDMなきiOS端末の業務活用はありえないと言えるまでになってきました。
もしお客様のiOS端末導入や業務用アプリ開発を支援する立場なら、MDMを導入済みかどうかの確認、もし未導入であるなら導入の提案、できれば導入と運用の支援まで行いたいものです。自社に業務用iOS端末を導入する企業担当者の立場なら、時間の浪費やトラブルを最大限回避するためMDM導入を前提とすることが推奨されます。
変化の激しい業界ですので、Apple が公式に発信する一次情報を中心に、常に最新情報を掴んでおく姿勢も重要です。直近(2026年)の大きな動きとしては、
- Apple が無償のデバイス管理(MDM)サービスを公式リリース
- Apple が端末管理を意味する用語を「MDM」から「デバイス管理」に変更
あたりが挙げられます。
基本的なデバイス管理であれば有償のサードベンダーMDMを選択する必要すらないという状況となっており(販売パートナーでもある弊社が言うのもおかしな話ですが😅)、2026年はMDM業界にとっては大きな節目となりました。
そうした情勢や、デバイス管理(MDM)の役割や仕組みについて理解を深めるとともに、無償でどこまでできるのかを正しく理解している必要もあります。Apple Business が内蔵するデバイス管理(MDM)を触らずに、顧客提案やご支援、また自社でのデバイス管理の導入検討が最適解に辿り着ける可能性は低いです。

(大量のiOS端末を手動設定する様子。MDMを正しくフル活用すればこのような手間はほぼ不要となる)
本稿では、デバイス管理(MDM)の基礎を改めて解説したいと思います。
デバイス管理(MDM)でできること
デバイス管理とは、モバイル端末を中心に多数の端末を管理するための仕組み(プロトコル)、あるいはサービスのことを指します。Apple は、2026年3月までデバイス管理のことをMDM(Mobile Device Management の略)と呼んでいました。今はMDMではなくデバイス管理と呼びますので、本稿では「デバイス管理(MDM)」と記載します。
デバイス管理(MDM)サービスは、iOS端末に限らずAppleTVや、他にも Android 端末、Windows端末、macOS端末も対象としている場合がありますが、多くの場合、iOS/Android端末を管理する為に導入します。
デバイス管理(MDM)ができることは以下の4つとされます。サービスによって言い方や分類は微妙に異なりますが、整理すると以下の4つと考えていいでしょう。
| 機能 | 詳細 |
|---|---|
| アプリ(コンテンツ)配布 |
|
| 設定配信 |
|
| 遠隔制御 |
|
| 情報収集 |
|
デバイス管理(MDM)は、iOS等のモバイル端末導入時の懸念をほぼ全て解消します。もし以下のような心配が1つでもあるのなら、台数に関係なく1台だけでもデバイス管理(MDM)を導入することが推奨されます。
- 万が一社員が端末をなくした時に情報漏えいしないか?
- 配布する全端末をいちいち一個ずつ設定しないといけないのか?
- 社員が端末で何をしているか分からないのではないか?
- 業務で使用するAppStoreアプリを従業員に立替購入させるのか?
これらが気にならない責任者や情報管理部門はいないでしょう。デバイス管理(MDM)はこれらの心配を全て払拭してくれます。従って法人でデバイス管理(MDM)は必須であり、iOS端末管理の1丁目1番地と言っても良い最も重要なサービスです。
デバイス管理(MDM)サービスはどこを選ぶべきか
サードベンダーが提供するデバイス管理(MDM)サービスを契約・初期設定することが一般的です。代表的なMDMサービスを以下にあげます。(後述しますが2026年4月以降は状況が異なっています)
| 名称 | ベンダー |
|---|---|
| BizMobile Go! | IoT EX |
| mobi connect | インヴェンティット |
| CLOMO MDM | アイキューブドシステム |
| Jamf | Jamf |
| Meraki | Cisco |
| AirWatch | VMWare |
| Intune | Microsoft |
これらはほんの一部で、歴史的な経緯もあり世界中には何十というデバイス管理(MDM)サービスが存在します。どのベンダーも揃いも揃って自社のデバイス管理(MDM)がNo.1であると喧伝している面白い業界ですね。

(OEMを受けて自社ブランドで提供している国内ベンダーもある)
が、2026年4月に Apple 公式のMDMである Apple Business が発表されました。厳密には Apple Business そのものがデバイス管理(MDM)サービスなのではなく、法人向けの様々な情報管理ポータルが Apple Business であり、その主要な一機能としてデバイス管理サービスが内蔵されているという構図です。

(ABM,ABE,ABCという3つのサイトが統合されて Apple Business としてリリース)
Apple Business に内蔵されたデバイス管理(MDM)の機能を、内蔵デバイス管理、または組み込みデバイス管理と呼んでいます。最大の特徴はそこそこ機能を備えていながら無料であるということ。従って2026年4月以降は、デバイス管理(MDM)にどこを選ぶべきか?の判断基準は大きく変わっています。
選定で最も注意すべきこと
デバイス管理(MDM)の導入にあたり、最初に2つの選択肢があります。
- Apple Business を使う(無料)
- サードベンダーMDMを使う(有償)
2026年4月以降、前者の選択肢を選べるようになりました。費用がかかる要素がなく、Apple から端末調達している場合はある程度相談に載って貰える上、オンラインマニュアルや専用窓口も用意されていますので、デバイス管理(MDM)導入と運用の両フェーズで本当に全部が無料です。
ただ全部をお膳立てしてくれるわけではありません。Apple Business では学習と実践を「自分でやる」ことが基本です。それが難しい事情があって、Apple Business を体得するために研修して欲しいとか、設定や運用作業の代行をお願いしたいという期待があれば、Apple Business の導入支援に対応してくれるベンダー(弊社はその一社です)を探しましょう。Apple は研修や代行作業をやってくれるわけではありませんので。
一方、Apple Business だと不十分だという場合には、後者を選択することになります。2026年3月以前はこちらの選択肢一択でした。直接ベンダーと契約するか、各メーカが定めている販売パートナーと契約を結びます。
サードベンダーMDMは台数依存のランニングコストがかかりますし、代行や研修までお願いすると追加の月額費用や初期費用までかかってきます。これをどう見るか…ですね。
デバイス管理(MDM)は、iOS端末を使い続けるかぎり永遠にコストを要するものです。仮に¥300/月/台なら、100台で毎月¥30,000、500台なら毎月¥150,000、3000台なら毎月¥900,000です。それぞれ3年続けるだけで約100万円、約500万円、約3000万円…。最初の選択肢が大事だと言うことがよくわかりますね。端末の買い替え費用に使えそうです(笑)
最初にまず Apple Business を導入して最低限の端末管理をする、そして必要になればサードベンダーMDMへの移行を考える。これが全ての企業に当てはまるリーズナブルな進め方だと弊社は思います。
いざ移行となった時の大変さは否定できませんが、一方で移行が不要になるような Apple Business の進化にも期待できるわけですし、そもそもデバイス管理(MDM)とは異なるアプローチで要件を解決できる可能性もありますからね。
いずれにしても、デバイス管理(MDM)を運用すると、日々新しいタスクやインシデントと向き合うことになるので、すぐに相談できるかどうか?という体制づくりは重要です。技術や知識に裏付けられた安心できるサポートが受けられるかはよく確認しておくことをお勧めします。
弊社は、Apple Business の導入・運用ご支援を基本とし、要件が満たせない場合は販売パートナーをさせて頂いている BizMobile Go! をご提案しています。Apple Business の設定・運用の代行や研修、業務アプリの選定/開発などデバイス管理(MDM)の周辺全てをご支援しています。

(専用のチャットを用意してご支援する様子。MDMに限らずABMやアプリ開発等、本サイトの知見を総動員)
デバイス管理(MDM)の技術的な仕組み
デバイス管理(MDM)がどのように動作するか、技術的な概要もおさえておきましょう。デバイス管理(MDM)は通常クラウド上で構築されておりブラウザから操作しますが、通信の流れは以下の通りとなっています。

(デバイス管理(MDM)でPUSH通知が非常に重要な役割を担う。常時オフライン前提の環境では原則、デバイス管理(MDM)は使えない)
- デバイス管理(MDM)はその利用者の操作をトリガにPUSH通知サービス(APNs)にPUSH通知リクエストを投げる
- APNs は然るべきiOS端末にPUSHを飛ばす
- iOS端末はあらかじめ紐付けられたMDMと通信する
厳密には、2の通知によりiOS端末ではmdmdと呼ばれるデバイス管理(MDM)との通信を司るプログラムが叩き起こされます。そして、3でデバイス管理(MDM)に対して「命令はなんでしょうか?」と問い合わせを行い、デバイス管理(MDM)からコマンド(命令)を受け取って実行、その結果をまたデバイス管理(MDM)に返す…というやりとりを行います。
デバイス管理(MDM)は常にこのトライアングルで動作しています。冒頭にあげた4つの役割(アプリ配布・設定配布・遠隔制御・情報収集)の全てです。そう、デバイス管理(MDM)はPUSH通知なくして機能しないのですね。
2009年当時、iOS4でPUSH通知機能の搭載が発表されました。アプリ開発界隈でとても歓迎されましたが、実はPUSH通知機能は同タイミングで登場したデバイス管理(MDM)を実現するためでもあったのです。Appleがいかに早い時期からエンタープライズの世界を見ていたかが分かります。
デバイス管理(MDM)がネットワークのTCP/IP層でどのように動作するかについて MDMの導入で意識しておきたい社内ネットワーク設定 の投稿に詳細を解説していますので宜しければご覧ください。情シス担当者の方は、デバイス管理(MDM)が社内ネットワークに与える影響を導入前に理解しておく必要があります。
最後に、デバイス管理(MDM)で重要な役割を担うPUSH通知に関連して、PUSH通知証明書について解説します。
AppStore向けにアプリ開発する際、PUSH機能を使うアプリごとにPUSH通知証明書の取得や設定が必要となりますね。デベロッパーの方はよくご存知だと思います。

(アプリ毎にAPNsへPUSHを投げるための証明書を作成する)
これと同様、サードベンダーMDMを使うにはMDM専用のPUSH証明書の取得や設定が必要となります(Apple Business の内蔵デバイス管理の場合は不要です)。ただ、MDM用のPUSHはアプリ用のPUSHとは厳密には異なりますので、CSR生成や証明書取得の手順も大きく異なっています。
PUSH通知証明書はApple Push Certificates Portal で、MDM用のCSRを登録して入手します。

(Appleが特別に用意する証明書ポータルに、MDMサービス提供会社から入手するCSRを登録して申請する)
ここで登録するCSRはMDMサービスから提供されるもので法人しか入手できないため、必然的にMDMを使えるのは法人だけとなります。個人で入手する方法は残念ながらありません。(このため個人デベロッパーがMDMを前提としたアプリを開発するのは難しくなっています)

(BizMobileの初期設定画面で、MDM用の特別なCSRを入手する様子。各MDMが同様の機能を備える)
一部のブログ等々でCSRをADEP(Apple Developer Enterprise Program)から入手するとの記載がありますが、2023年現在では誤った情報ですので注意して下さい。なお、PUSH証明書の取得手続きについては、MDMの導入から利用開始まで(1) 〜PUSH証明書の取得〜 に詳しく紹介しています。併せてご覧下さい。
ということで、デバイス管理(MDM)とは何か基本的なことと仕組みをご紹介しました。上述の通り、弊社は Apple Business を原則的に推奨し、要件を満たせない場合は BizMobile Go!をご提案することにしています。
数あるMDMの中でBizMobile Go!を推奨するのは、黎明期からある国産MDMであり(大手企業のMDMは実は内部がBizMobile Go!…というケースも多々ある)、価格もリーズナブルで、特に開発会社にとって使い易いのがその理由です。
ただ各社それぞれ諸事情があると思いますので、上述した Apple Business の内蔵デバイス管理を含めMDMのサポート面や費用面も勘案しながら自社に最適なMDMを選ぶようにして下さい。
お知らせ : iOSDS2020で講演しますしました
2020年9月19-21日開催されたiOS関連で国内最大のイベント iOSDC2020 で、以下のようなタイトルでお話させて頂きました。
40分にわたりエンタープライズiOSの全体像をご説明しました。
本稿でご紹介したMDMにも言及。MDMが必要となる背景やプロトコルの詳細もご紹介し、ADEP, カスタムApp, 監視モード, Apple Configurator, 構成プロファイル, Apple VAR, Apple Business Manager, DEP 等々が MDM とどう連携・関連するのかを解説しています。
講演の詳細な内容は iOSDC 2020 Day1 でエンタープライズiOSについて講演しました(YouTubeで収録動画が公開されました) の投稿でご覧頂けます。録画も視聴可能です。是非ご覧ください。
