2019.11.28
ADEP (Apple Developer Enterprise Program) とは何か
(最終更新日 : 2020/9/10)
iOSアプリ開発では、Apple Developer Program という Apple との契約が必要になります。ただ、ひとことに「契約」と言っても Apple との契約には幾つか種類があり、それがエンタープライズでのiOSアプリ開発を少々ややこしいものにしています。
本稿では Developer Program の種類と、ADEPをどのような時に選ぶべきかをおさらいしておきたいと思います。
Develorer Program の種類
2019年現在、Developer Program は以下の通り3種類あります。
種類 | ADP | ADEP | iDUP | |
---|---|---|---|---|
AppStore | 個人/法人 | 法人 | 教育機関 | |
年間料金 | ¥11,800 | ¥37,800 | 無料 | |
配 布 方 法 |
AppStore | ◯ | ☓ | ☓ |
InHouse | ☓ | ◯ | ☓ | |
AdHoc | ◯ | ◯ | ◯ | |
Development | ◯ | ◯ | ◯ |
ADP : Apple Developer Program
AppStoreでのアプリ公開を前提とした Developer Program で個人と法人が対象です。アプリ開発の書籍やスクール教材でよく見かける契約手続き紹介に出てくるのはこちらです。
ADEP : Apple Developer Enterprise Program
法人のみが契約可能な Developer Program です。AppStore で公開しない社内専用アプリを開発する場合、こちらを選択します。ただし2020年現在、ADEPの契約はほぼ不可能です。(参考 : ADEPはもう取得することができないと諦めたほうが良い理由)
iDUP : iOS Developer Universal Program
学生にアプリ開発教育をする教育機関のみが契約できる Developer Program です。教育用途のため配布方法が限られているのが特徴です。本サイトでは扱いません。
Developer Program と配布の関係
Developer Program の本質的な違いは、配布方法の差です。配布とはAppleのドキュメントで Distribution と表記されます。開発したiOSアプリをどのようにiOSデバイスにインストールする(させる)のかの形態を表しています。
冒頭の表の通り、配布方法には AppStore / InHouse / AdHoc / Development の4種類があり、ADEPだけがInHouseという特別な配布方法を使うことができます。
では、InHouse 配布とは一体なんでしょうか。何ができて、何ができないのでしょうか。表にすると以下のようになります。
AppStore | InHouse | AdHoc | Development | |
---|---|---|---|---|
用途 | リリース | リリース | 開発/評価 | 開発/評価 |
インストール可能なiOS端末数 | 無制限 | 無制限 | 100台(端末種別毎) | 100台(端末種別毎) |
デベロッパー組織外端末への配布 | 可 | 不可 | 可 | 不可 |
アプリ配布手段の用意 | Apple (AppStore/ CustomApp/ TestFlight) |
自由 (USB/OTA) |
自由 (USB/OTA) |
自由 (USB/OTA) |
アプリ審査 | あり | なし | なし | なし |
InHouse が特権的な配布方法であることが分かるでしょうか。審査は不要、インストールする端末数は無制限、配布手段も自由です。
審査不要ですからバグ修正版を全従業員に即日リリースができます。イントラネットに自社専用アプリストアを作ることもできます。ABM/DEP/MDMを連携して箱から出したばかりのiPhoneに無設定にいきなりアプリを強制インストールする運用も可能になります。
このように、InHouseでは企業がiOS端末を活用し易いよう、あらゆる制限が排除されています。自由裁量が最大限に確保されている特別な配布方法であり、この特別な InHouse 配布を使えるのが ADEP (Apple Developer Enterprise Program ) のみとなります。
自由が欲しいなら InHouse。 InHouse なら ADEP というわけです。
InHouse唯一最大の制限
企業用アプリにとても都合の良いInHouseですが、守るべきたった一つのルールがあります。それは、InHouse 配布するアプリは、ADEP契約主体の組織外の人が使う端末にインストールさせてはいけないということ。従業員や業務委託者だけがインストールできるように、厳重な権限管理のもとアプリ配布をおこなう必要があります。
例えば、ADEPを契約して開発したアプリを自社の公開サーバから不特定多数のユーザにInHouse配布することは厳禁です。(物理的にはできてしまいます)
実際によくあるご相談ですが、
- AppStore上でオープンにしたくないが、一般ユーザのiOS端末へ自由にインストールさせたい
- 審査されたくはないが、自社以外の会社の端末にも制限なくインストールさせたい
といった要望を叶えることはできません。なぜならいずれも組織外端末へのインストールだからです。この制約の抜け道は皆無です。例外はありません。
ルール違反をした場合、ADEPの契約を破棄される場合があり、最悪ビジネスや業務が停止する可能性もあります。そのようなリスクを背負うのは得策ではありませんので、InHouse配布するアプリを開発する場合はADEPについて見識あるベンダーに相談した上で進めるべきでしょう。
別のエントリ「ADEPの契約ができないパターン集」に、ADEPのNGパターンを紹介していますので併せてご覧ください。
以上、Developer Program と配布の関係についてのまとめでした。
なお、2020年現在ADEPの新規契約はほぼ不可能となっており、非公開の企業アプリはADEPによるInHouseではなく、カスタムAppを使うべきとされています。詳しくはADEPはもう取得することができないと諦めたほうが良い理由の投稿をご覧下さい。
お知らせ : iOSDS2020で講演します
2020年9月19-21日開催が予定されているiOS関連で国内最大のイベント iOSDC2020 で、以下のようなタイトルでお話させて頂くことになりました。
40分にわたりエンタープライズiOSの全体像をご説明します。
本稿でご紹介したADEPにも言及します。ADEPによるInHouseが使えなくなることを踏まえて、デベロッパーはどのような配信手段をとるべきなのか、MDM や Apple Business Manager や カスタムApp について詳細を解説いたします。
エンタープライズiOSの世界を概観できる他にないコンテンツとなっております。有償のイベントとなりますが、オンラインで視聴できますので iOSDC2020 のサイトからお申し込み頂き、是非ご参加下さい。