2026.4.24
Apple Business ファーストインプレッション(1) – iOS端末管理(MDM)導入のハードルが無くなった –
前回の投稿で紹介した Apple Business が予定通り2026年4月14日にリリースされました。
Apple Business Connect というマーケティング用途のサービスが統合されたり、Appleの新施策な機能も内包されたりで、デバイス管理(MDM)の域を超えた法人向け総合ポータルに仕上がってます。

(リリース日とされていた4月14日は米国時間なので。日本時間では4月15日から)
マーケティング関係は本サイトの主旨とは若干ずれますので、本稿では、デバイス管理(MDM)の機能を中心に Apple Business のざっくりレビューを幾つかに分けてお届けしたいと思います。一通り触ってみた感想を最初に書くと、
- 機能が一部限定されるが、デバイス管理(MDM)の敷居は極めて低くなった
- MDM未導入の企業は、まず Apple Business でデバイス管理を始めるのがお勧め
- MDM導入済の企業でも、業種・業界・規模を問わず再評価する価値がある
です。
弊社は、BizMobile Go!というサードベンダーMDMの販売パートナーでもあるので正直言いにくかったりもするのですが、大半の企業のデバイス管理(MDM)は Apple Business で十分となるという印象です。
圧倒的な導入しやすさ
MDMによるデバイス管理とは、中心的な役割を担うサードベンダーMDMがAppleのサービスと連携するという構図が基本でした。契約したらすぐ使えるのではなく、各サービスを「連携」させる初期の構築作業が必要だったんですね。これが結構面倒くさいのです。

(セミナー等で紹介する図。丸印が連携させるべき箇所)
アプリのライセンス管理には、ABMとMDMのVPP連携が、キッティングの自動化にはABMとMDMのADE連携が、そしてMDMをそもそも機能させるためにAPNs連携が…といった具合。証明書ファイルやトークンファイルなど、多くの人にとっては何それ?なモノをダウンロードしたりアップロードしたりを、幾つか、そして毎年、行う必要がありました。
Apple Business では、それらが一切いらなくなります。
連携作業がゼロ。そりゃそうですよね。連携とはつまり、非AppleなMDMとAppleのサービス群(ABMやAPNs)との間に信頼関係を構築する為の儀式だったわけで、全部がAppleなら信頼関係もへったくれもないからです。
証明書もトークンそのものが不要だし、更新作業も必要ありません。本質的なデバイス管理にのみ目を向けることができます。やることは、最初にデバイス管理機能を使います!と意思表示するだけ。こんなふうに…

(Apple Business でのデバイス管理機能のことを「組み込みデバイス管理」と呼ぶ)
連携作業のような面倒な作業なく、すぐ設定作業に移ることができます。考えなくて済むことが多いのは、管理部門にとっては良いことです。

(連携作業を全てすっ飛ばして管理のための作業にすぐ入れる)
いわゆる情シスのような管理部門の方からすると、正直、冒頭で述べたような余計な(?)マーケティング的機能がノイズに見えなくもありません。Apple Business Connect というサービスが統合された結果ですが、例えば「ブランド」なるページ。

(およそデバイス管理には無関係に見えるブランドメニュー)
デバイス管理(MDM)的には必要ありませんね。でも、ご心配なく。Apple Business では、画面・機能の単位で細かく権限設定ができるようになってます。

(機能単位でON/OFFが指定できる)
権限をある程度まとめた「役割」もプリセットで幾つか用意されています。ABM時代の「コンテンツマネージャ」「デバイス登録マネージャ」「ユーザマネージャ」という管理系の3つの「役割」も移行されています。

(「役割」のプリセットにIT管理者とマーケティング管理者が増えた)
権限設定や「役割」をうまく使えば、Apple Business を、デバイス管理(MDM)の機能しか持たないサイトとして見せることも可能ですので、管理部門に優しい作りになっていると言えるでしょう。

(ブランドメニューを消した。なぜか「広告」だけは表示が残る。が、機能しない)
ちょっと権限系の話に逸れてしまいましたね。話を戻しましょう。
Apple Business はとにかく、デバイス管理(MDM)を始めるのが超絶楽です。そのうえ、台数の上限もなく、さらに無償。軽く試してみて、不要ならやめればいいですし、便利さを実感して本格導入することになっても、費用が発生することもなくそのままスケールできるという安心感があります。
あえて面倒なことをあげるなら、Apple Business の利用申請ぐらいでしょうか。DUNS番号の取得が必要だったり、Apple担当者との電話や場合によっては登記簿の提出が必要だったり…。
ただ専用のサポート窓口がありますから、それほど身構えるような大変さでもありません。日本語で会話できますし、Appleから直接端末を購入すれば各ストアの法人チームからの支援も得られます。

(ABM時代から専用のサポート窓口が設けられている)
なお、すでにABMを利用申請済みな企業は、ABMがそのまま Apple Business にアップグレードされてますから、面倒なことは何一つなくすぐに始められます。Apple から以下のような Apple Business の案内メールが届いている筈です。

(即座に Apple Business でデバイス管理が可能になる)
ここまでで、Apple Business はお手軽に導入ができて、権限設定も柔軟にできることを解説しました。次に気になるのは機能面ですね。もし Apple Business のデバイス管理(MDM)機能が貧弱なら「始めるのは楽だけど機能がちょっとね…」という評価になりますが、実際のところどうでしょうか。
遠隔操作
デバイス管理(MDM)を始める動機の一つに、紛失や盗難時の対策があります。遠隔で一時的にロックするとか、初期化してデータを消すとかとかですね。有事の際に端末を保護するための機能ですが、Apple Business にはこれが標準で搭載されています。
まずは一時的なロック。紛失した端末を全く触れなくなる状態(紛失モードと呼ぶ)への切り替えを遠隔で行うことができます。そのまんまのボタンがありますね。

(紛失モードはiOSが標準で備える特別なモード)
このボタンをポチッとクリックすると、確認画面を経たあと、端末に命令が送られて、一切の操作を受け付けない状態になります。こんな感じ。

(文章や電話番号は Apple Business 上から指定できる)
HOME画面に移動することもできませんし、アプリを起動することもできません。この画面だけ。さらに紛失モード中は、端末の現在位置を Apple Business 上で把握できます。

(セルラー版の端末なら現在位置のトラッキングが可能)
運良く端末が見つかれば、Apple Business の画面から紛失モードを解除。端末の正規の利用者は、データ・設定等そのままに何事もなかったかのように使えるようになるってわけです。便利ですね。
この一連の機能は、従来のMDMで「紛失モード切り替え」とか「管理者ロック」と呼ばれていたものです。従業員の端末紛失というインシデントに備える機能として提供されてきました。Apple Business ではこれをなんと、無償で使えます。台数制限もなければ、複雑な設定もありません。すごくないですか?
さてでは、紛失ではなく、端末の盗難というインシデントの対策はどうでしょう?盗難時は、ロックするだけじゃなく、情報漏洩を阻止するためいっそのこと端末を初期化したくなりますよね。
もちろん、Apple Business に遠隔で初期化する機能が備わってます。

(色んな操作ができるが、ABM時代の機能とMDM特有だった機能が混在している印象)
端末のメニューからただ「消去」をクリックするだけ。初期化命令が飛んで、端末は強制で初期化されます。情報漏洩リスクを軽減できますね。従来のMDMでは「ワイプ」とか「リモートワイプ」と呼ばれていた機能です。
なお、デバイス管理(MDM)の仕組み的には「再起動」「スリープ」「パスコードの消去」といった遠隔操作も可能なのですが、Apple Business には搭載されていないようです。これらの遠隔操作をしたいなら、サードベンダーのMDMを選択することになります。
ずいぶん長くなりました。一度区切りましょう。
ここまでで、Apple Business は簡単に始められること、主要な遠隔操作機能が標準で搭載されていることを紹介してきました。やはり無償で使えて端末数制限もない点に、新しさ(脅威?)を覚えますね。
次回は、デバイス管理(MDM)のもう一つの主要な機能である「設定や制限の配布」が、Apple Business でどのように行えるのか紹介をします。