2018.10.13

社内用独自アプリ(in-house)を開発しようと思ったら最初に考えるべきこと

iPhoneやiPadに使い慣れてくると業務に使う自社専用アプリを開発したくなることがままあります。あるいは、一念発起してiPadを全社導入するのを機会に専用アプリを作りたくなる場合もあります。

アプリに限らず何かと自社システムを欲するのは日本企業の性(サガ)なのでしょう。

ですが、

自社の業務用アプリ開発はお勧めしません

これは、10年間、B2Bも含めアプリビジネスをやってきた経験から全力で強調したい点です。自社アプリ開発は、他に選択肢が無い場合に限って初めて考えるべき選択肢です。余り吟味することなく自社専用アプリ開発を考えているようであればその考えは早々に捨てて下さい。

本エントリではその理由を解説すると共に、業務アプリにどう向き合うべきかのガイドラインを示します。

かつて業務用OSはバージョンを固定できた

アプリは開発したら終わりと捉えられがちです。

が、多くの業務システムがそうであるように、業務用アプリもまた「完成してからがスタート」です。要件定義や仕様策定、実装やテスト等など、アプリの初期開発フェーズはプロローグ、本編は作った後に始まります。

従来、どのOSバージョンを使うかの決定権はユーザ企業にありました。WindowsXPを前提に開発した社内の業務システムは、WindowsXPであり続けることを前提にできたのです。Windows7マシンをわざわざWindowsXPにダウングレードなんてことも見聞きしたことがある筈です。

しかし、モバイルOSではOS提供側とOS使用側の力関係が反転しました。

iOSをアップデートしないという選択肢はない

スマホやタブレットのOSはユーザ企業の意思で固定できません

iOSもしかり。iOSの支配者はAppleです。

(最新のiOS12リリースから1ヶ月で半数がアップデートされている → source)

Appleがアップデートすると言ったら追随するしかありません。半ば強制的なアップデートです。業務用のiOS端末を集中管理するMDM(Mobile Device Management)をもってしても、iOSアップデートを阻止することは残念ながらできません。(iOS12でMDMを使って猶予を設けることは可能になりました。が、それでも「猶予」に過ぎません)

iOS10の時代に作ったアプリがiOS11で使えなくなる…なんてことはよくあります。少し画面がおかしいといった軽微なことなら許容できますが、アプリの作り方が悪いと新しいiOSでは起動すらできなくなるという許容できない事故になる場合もあります。

これは、開発したアプリは常に最新OSに対応し続けていく必要があるということを意味します。しかも、最新OSがリリースされてしまう前にです。

ここで少し考えてみて下さい。Windows7→Vista→8→10と常に新しいOSの登場のたびに自社の業務システムをアップデートし続けなければならないとしたらどうでしょう?iOSのアプリを自社で開発するということは、そういうことなのです。

更新され続けるOSに都度対応していく覚悟が持てますか?

自信を持ってYESと答えられないなら、業務アプリを独自に開発してはいけません。別の手段に頼ることを強くお勧めします。

(「今すぐインストールする」を誰もクリックしないという保証はない。間違って重役の人が勝手にアップデートしてしまってアプリが動かなくなったら?)

星の数ほどある既成アプリを使うことから始める

実は、アプリを使って○○をやりたいと考える場合、○○の大半はできるアプリが既に存在します。

営業支援アプリ、フィールドワーク支援アプリ、ビデオ会議アプリ、資料共有アプリ、情報共有アプリ、MR向けアプリ、工事現場向けアプリ…等など何でもあります。

業務用アプリは2010年頃から増えはじめました。国産のものだけでも、数え切れないほど沢山あります。それを使わない手はありません。作らなくても目の前にあるのですから。

前述したOSアップデートへの追随はアプリ提供会社が責任を持ちます。ユーザ企業はiOSのアップデートに併せて、提供されるアプリをアップデートするだけで良いのです。余計な心配をする必要はありません。

  1. まず既成品アプリを活用する
  2. アプリに不足している部分があれば開発元に機能追加を要望する
  3. (開発元が対応してくれるのなら)自社向けにカスタマイズ開発を依頼する
  4. 2,3も期待できないなら他のアプリで代替できないか再検討する
  5. 自社独自のアプリを開発を検討する

これが業務アプリと向き合う段階を示したガイドライン。検討時の優先順位です。多くの場合、2までで要件は満たせます。わざわざ開発しなくても良いのです。

自社で業務用のアプリを開発したいと思ったら、まず既成品を評価することから始めましょう。勇気を持ってそのアプリに自社業務を合わせる姿勢でアプリと向き合って下さい。そのほうが、開発に時間とお金をかけてまで未来の面倒を抱え込むことに比べたら遥かに生産的です。

多くの企業にとって、自社でアプリを開発することが本業ではない筈です。

様々な業務用アプリを紹介しているサイトは多数あります。iOS端末を調達する際の調達先(携帯キャリアやリセラー)企業に、お勧めのアプリが無いか自社の要件を伝えてみて下さい。導入支援を依頼してもいいでしょう。もちろん弊社にお問い合わせ頂いても結構です。

本サイトはACNメンバーの(株)フィードテイラーが運営するエンタープライズiOS情報サイトです

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